日本株の売り手と買い手
市川レポート(No.150)日本株の売り手と買い手
- 投資部門別の売買動向に基づき、需給面から日本株反発のシナリオを考える。
- 海外投資家の相場への影響は大きく、買い戻しに転じた場合は株高の原動力になろう。
- 個人の逆張り傾向は顕著だが不安心理の払拭が必要、年金マネーは相場の下支えに。
投資部門別の売買動向に基づき、需給面から日本株反発のシナリオを考える
9月29日の日経平均株価は前日から714円27銭安(4.0%安)の16,930円84銭で取引を終えました。しかしながら翌30日には一時500円近く大幅上昇するなど、相変わらず値動きの大きい展開となっています。日本株の見通しについては前回のレポートでお話ししましたが、やはりしばらく不安定な相場が続くと思われます。そこで今回は日本株の需給に注目し、売り手と買い手の動向を検証しながら、日本株反発のシナリオを考えます。
東京証券取引所は、東京および名古屋証券取引所の第一部、第二部等における総売買代金を、投資部門別に集計・公表しています。取引は自己勘定と委託取引に分けられ、後者には法人、個人、海外投資家、証券会社という4つの区分があります。このうち法人には投資信託、事業法人、その他法人等、金融機関という4つの内訳があり、さらに金融機関は生保・損保、都銀・地銀等、信託銀行、その他金融機関の4つに細部化されています。
海外投資家の相場への影響は大きく、買い戻しに転じた場合は株高の原動力になろう
総売買代金のシェアが最も大きいのは海外投資家です。2015年1月から8月までの月間平均シェアは66.8%でしたが、9月に入り第1週から第3週までの週間平均シェアは72.5%に上昇しています。一般に海外投資家の売買動向は日本株に強い影響を与えると言われていますので、最近の海外投資家のシェア上昇は、このところの株価の振れ幅拡大に関係しているものと推測されます。
そこで海外投資家の取引について売買差額を2015年1月から累計し、東証株価指数(TOPIX)の推移と重ねてみます。なお東京証券取引所は先物取引も同様に投資部門別の取引状況を公表していますが、海外投資家が主要取引で80~90%のシェアを占めていますので、取引売買差額の累計は現物と先物をそれぞれ計算します。その結果を示したものが図表1ですが、やはり海外投資家の取引動向は株価に相応の影響を与えていることが分かります。
個人の逆張り傾向は顕著だが不安心理の払拭が必要、年金マネーは相場の下支えに
次に他の投資部門についてもみてみると、かなり特徴的な動きが読み取れます。図表2は信託銀行と個人の取引について、現物のみの売買差額を2015年1月から累計し、東証株価指数(TOPIX)の推移と重ねたものです。信託銀行は公的年金や企業年金の売買動向を反映するとされますが、1月からの累計で買い越しが続いています。特に足元の動きをみると株安局面でも年金マネーは着実に買いを入れている様子がうかがえます。
一方、個人は1月からの累計で、2月以降大幅な売り越しとなっています。個人の取引には、株価の上昇局面で売り向かい、下落局面で買い向かうという逆張りの傾向があります。実際に図2をみる限り、売り越し額が株価の上昇に伴って増え、下落に伴って減っており、逆張りの動きが確認できます。ただ不安心理がまだ残っているためか、買い越しまでには転じていません。以上より需給面から日本株反発のシナリオを想定してみます。まずは価格影響力の大きい海外投資家の買い戻しという原動力が必要になりますが、それがきっかけとなって、個人投資家が逆張り(買い向かい)傾向を強め、年金マネーの下支えも手伝い、相場は徐々に安定に向かうという流れが期待されます。
(2015年9月30日)
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