FOMC後の市場動向

市川レポート(No.148)FOMC後の市場動向

  • 米金融政策の先行き不透明感は払拭されず、FOMC後の株式市場は総じて軟調に推移。
  • 為替市場でも新興国通貨などの下落が続き、リスクオンに転じる動きはみられていない。
  • 日本株や円相場は引き続き米金融政策や中国景気に関する手掛かりを模索する展開に。

米金融政策の先行き不透明感は払拭されず、FOMC後の株式市場は総じて軟調に推移

 9月16日、17日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、最近の世界経済と金融市場の情勢などを踏まえ、利上げの見送りが決定されました。ただ利上げ時期などに関する明確な手掛かりは得られず、金融政策の不確実性は残ったままとなりました。そこで①9月9日~16日と、②9月16日~23日のFOMC前後2期間について、主要市場の動きを確認してみます。

 はじめに株式市場の動向を検証します。ダウ工業株30種平均は①で+3.0%、②で-2.7%となりました。またストックス欧州600指数は①が-0.5%、②が-4.1%、MSCI新興国株価指数は①が+1.1%、②が-2.4%でした。つまりFOMC前は利上げ見送り期待から株式市場は総じて堅調に推移していましたが、FOMC後は利上げ見送りとなったものの、先行き不透明感が払拭されず、株式市場は利益確定の売りに押され軟調に転じたことが分かります。  

為替市場でも新興国通貨などの下落が続き、リスクオンに転じる動きはみられていない

 次に為替市場を確認します。夏場以降、米国の利上げ観測や中国の景気先行きという2つの不確実性を背景に、過剰流動性の縮小や天然資源の需要減少などの懸念から、新興国通貨や資源国通貨が大幅に減価し、相対的に米ドルや日本円が増価する傾向が続いていました。しかしながらFOMC前の①では、米利上げに関する何らかの手掛かりが得られるのではないかとの期待から、多くの新興国通貨や資源国通貨は対米ドルや対円で上昇に転じました。 

 ただ結局、FOMC声明、FOMCメンバーの経済および政策金利の見通し、イエレン議長の記者会見、いずれによっても金融政策の先行きを明確に見通すことはできず、FOMC後の②において、新興国通貨や資源国通貨は再び対米ドルや対円で下落基調に戻りました。このように為替市場でも本格的なリスクオン(選好)に転じる動きは依然としてみられていません。 

日本株や円相場は引き続き米金融政策や中国景気に関する手掛かりを模索する展開に

 その他の市場について①と②の動きをみると、CRB指数は+1.6%と-3.3%、世界ハイイールド債券指数は-0.4%と-0.9%であり、ともにFOMC後は軟調に推移しています。これに対し、世界リート指数は+2.5%と+1.1%となり、比較的落ち着いています。これはFOMC後の米国を中心とする長期金利の低位安定などが材料視されたものと考えられます。 

 今会合ではFOMCメンバーの大半は年内の利上げが適切とみていることが改めて確認されましたが、フェデラルファンド(FF)金利先物市場から算出される年内の利上げ確率は41%(9月23日時点)になっており、米金融当局と市場との対話はあまり上手く機能していないように思われます。そのためFOMC後の市場が全般に安定性を欠くのも止むを得ず、日本株や円相場も、リスクオフ(回避)に傾斜しやすい地合いのなか、引き続き米金融政策や中国景気に関する手掛かりを模索していく展開が予想されます。

   150924 図表1150924 図表2

 (2015年9月24日)

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