中国景気の不確実性は払拭されるか
市川レポート(No.139) 中国景気の不確実性は払拭されるか
- 中国政府は構造改革の推進と安定成長の維持により、消費主導型経済への移行を目指す。
- 政府目標の達成可否については、月次の経済指標を中心に検証していくことが必要。
- 中国景気の先行きに関する不確実性が払拭されるには、今しばらく時間を要しよう。
中国政府は構造改革の推進と安定成長の維持により、消費主導型経済への移行を目指す
現在、中国景気の先行き不安が金融市場の動揺につながっています。そこで改めて中国政府による経済政策の運営方針を整理し、今後市場の注目度が一段と高まると思われる中国の主要な経済指標について簡単に解説します。経済政策の運営方針は年に1回開催される「中央経済工作会議」で決定されます。2014年12月開催の同会議では、高速成長から中高速成長へ転換する「新常態(ニューノーマル)」に自発的に適応することなどが2015年の基本方針として定められました。
そして中国政府は目下、構造改革の推進と安定成長の維持により、年2ケタの伸びが続くような投資依存型の高速成長から、7.0%前後の消費主導型の中高速成長への軟着陸に努めています。具体的には、地方政府財政や金融制度の改革によって、過剰設備や過剰債務といった構造問題の解決に取り組むと同時に、それに伴う経済成長の鈍化に対しては、都市部のインフラ投資など対象を絞った小刻みな政策の実施でバランスをとっています。
政府目標の達成可否については、月次の経済指標を中心に検証していくことが必要
具体的な数値目標は2015年3月に開催された全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で正式に公表されました(図表1)。主なものをみると、2015年の実質GDP成長率は前年比7.0%前後、消費者物価指数伸び率は同3.0%前後、通貨供給量(マネーサプライ)M2伸び率は同12.0%以内となっています。全人代では中国経済のニューノーマル入りが強調されましたが、そのなかで政府目標が達成できるのか、月次の経済指標を中心に検証していくことが必要です。
中国では毎月上旬から中旬にかけて前月分の主要経済指標が発表されます。10日頃に消費者物価指数、卸売物価指数が発表され、その後は貿易収支、マネーサプライ、小売売上高、鉱工業生産、固定資産投資の発表が続きます。そのため数値目標が掲げられているものは、月次で進捗を確認することができます。なお実質GDP成長率は当該期終了の翌月下旬には明らかになるため、日本やユーロ圏よりも比較的早く確認することができます。
中国景気の先行きに関する不確実性が払拭されるには、今しばらく時間を要しよう
主要経済指標のなかでも速報性があり注目度が高い指標は購買担当者景気指数(PMI)です。中国では中国物流購入連合会(CFLP)と国家統計局が発表するPMI(政府PMI)と、英情報会社マークイットと中国メディア財新が発表するPMI(財新PMI)があり、前者は月初に前月分が公表され、後者は製造業の速報値が同月の下旬に公表されます。8月の数字をみると、製造業は政府・財新とも好不況の判断の境目となる50を下回っています。一方、非製造業はともに50を上回ったものの、低下傾向にあります。なお政府PMIの調査対象は大手企業中心、財新PMIは中小企業中心であることから、両者の動きが乖離することもあり、景況感をみるにあたっては総合的な判断が必要です。
足元でこれらの主要経済指標をみる限り、中国景気はまだ楽観できない状況にあると思われます。ただ当局はインフラ整備などを中心とする公共投資を積極的に行い、預金準備率の引き下げなど一段の追加緩和に踏み切るとみられることから、中国が深刻な景気後退に陥ることは回避されるとみています。しかしながらそれを確認するには今後の経済指標の発表を待たねばならず、中国景気の先行きに関する不確実性が払拭されるには、今しばらく時間を要するものと思われます。
(2015年9月2日)
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