中国要因が日本株に与える影響
市川レポート(No.123) 中国要因が日本株に与える影響
- 中国株は不安定な動きが続いているが、中国の金融システムに動揺はみられず。
- 中国景気が腰折れした場合、輸出減少を通じた日本経済や日本株への影響は大きい。
- 今のところ日本株への影響は限定的だが、中国株と中国経済の動向は注意が必要。
中国株は不安定な動きが続いているが、中国の金融システムに動揺はみられず
上海総合指数の7月の月間騰落率は-14.3%となり、下落率は約6年ぶりの大きさとなりました。中国政府は7月、矢継ぎ早に株価対策を打ち出しましたが、結局、同指数は節目の4,000ポイント台に定着することはできませんでした。その後も金融当局による相場安定のための介入は続き、7月31日には異常な取引を行ったとして複数証券口座に対する3か月間の売買停止が発表され、また投機的な先物取引の規制強化方針が示されました。
中国政府は株価急落による金融市場の動揺が国内景気に悪影響を及ぼす事態を強く警戒しており、7月30日の政治局会議では、システミックリスク(1つの金融機関の経営破綻が連鎖的に他の金融機関の信用不安を引き起こす危険性)を防止する強い姿勢が示されました。一般にこのリスクが高まると、短期金融市場で資金需給がひっ迫し、銀行間取引金利が急騰する傾向があります。ただ今のところ中国国内の銀行間取引金利は落ち着いており(図表1)、金融システムの動揺はみられていません。
中国景気が腰折れした場合、輸出減少を通じた日本経済や日本株への影響は大きい
中国株については、相場動向もさることながら、中国経済への影響を見極めることが大切です。日本の貿易統計によると、2014年の輸出相手国上位5カ国は、米国(シェア18.7%)、中国(18.3%)、韓国(7.5%)、台湾(5.8%)、香港(5.5%)となっています(図表2)。また地域別でみると、アジアが全体の54.1%を占めています。仮に中国景気が腰折れした場合、日本経済には中国向け輸出の減少という直接的な影響のほか、アジア諸国にも景気の下押し圧力が生じることで、アジア諸国向け輸出の減少という間接的な影響も生じます。
また2014年における中国向けの主要輸出品目の上位は、半導体等電子部品(シェア7.4%)、科学光学機器(6.9%)、有機化合物(6.3%)、自動車の部分品(5.4%)、プラスチック(5.3%)、自動車(4.7%)、鉄鋼(4.6%)となっています。中国向け輸出が減少となった場合には、これらの製品の輸出数量にも影響が及び、日本株では関連銘柄が売られやすくなることも想定されます。
今のところ日本株への影響は限定的だが、中国株と中国経済の動向は注意が必要
日本の国内主要企業の中から中国で積極的に事業展開を進めている50銘柄を選定し、浮動株を考慮した時価総額加重平均方式で算出する株価指数に日経中国関連株50があります。この指数と日経平均株価指数の7月の月間騰落率を比較すると、前者が-2.4%、後者は+1.7%となり、中国株安の影響で日経中国関連株50のアンダーパフォームは顕著です。
中国株は当局の株価対策が続くなかでも依然として不安定な値動きがみられます。ただ今のところ中国国内の金融システムや実体経済への影響は抑制されており、日本株についても相場全体への影響は限定的となっています。しかしながら中国景気が大きく冷え込んだ場合、前述の中国向け輸出の減少に加え、中国からの訪日客数の減少によるインバウンド消費の低迷、為替相場におけるリスク回避の円高進行なども予想されることから、日本経済と日本株にとって大きなリスクになります。そのため引き続き中国株式相場が中国経済に与える影響を注視していくことが極めて重要と考えます。
(2015年8月3日)
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