7月のFOMCを終えて

市川レポート(No.121) 7月のFOMCを終えて

  • フォワードガイダンスの微調整で、前回会合より利上げ条件に近づいたことを示唆。
  • 9月利上げを見込むが、当局は手掛かりを示さず、個々の経済指標の見極めが必要に。
  • 米利上げを控え日本株はやや神経質な動きに、ドル円の上昇も比較的限定されよう。

 

フォワードガイダンスの微調整で、前回会合より利上げ条件に近づいたことを示唆

 米連邦準備制度理事会(FRB)は7月28日、29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金融政策の維持を決定しました。今回のFOMC声明では、失業率に関する記述が「横ばいが続いた」から「低下している」へ、また労働資源の未活用の状況は「いくらか縮小した」から「今年の初めから縮小した」へ変更され、労働市場の判断が上方修正されました。また住宅市場の判断も、「やや改善がみられた」から「さらに改善がみられた」となり、上方修正されました(図表1)。

 FOMC声明のフォワードガイダンスで示される利上げの2条件は、①「労働市場がさらに改善すること」と、②「物価上昇率が中期的に2%の目標に戻っていくと合理的に確信できること」です。今回、労働市場判断の上方修正に伴い、①は「労働市場がさらに幾分(some)改善すること」に微調整され、前回会合よりも労働市場の改善度合いが進んで、利上げ条件に近づいたことが示唆されました。  

9月利上げを見込むが、当局は手掛かりを示さず、個々の経済指標の見極めが必要に

 しかしながら今回のFOMCでも利上げ開始の時期に関する手掛かりは得られませんでした。ただこれについては、イエレンFRB議長が「利上げは会合毎に検討する」と繰り返し主張しているように、FRBは最初の利上げに関する市場の予想を特定の時期に集中させないよう配慮していることを考えれば、仕方ないように思われます。こうすることによって、FRBは利上げ決定の自由度を確保し、都度発表される雇用や物価などの経済データを精査することが出来るようになります。

 利上げは早ければ9月16日、17日のFOMCで決定される可能性があるとみています。次回9月のFOMCでは、FOMCメンバーによる米国経済および政策金利に関する最新見通しが公表され、イエレンFRB議長の記者会見が予定されています。利上げが決定された場合、見通しや記者会見は市場との対話を行う好機になると思われます。なお次回FOMCまでに雇用統計と個人消費支出(PCE)物価指数は2カ月分が公表されます。今後もFRB高官からは、利上げ時期を特定するようなコメントは出ないと予想されるため、9月の利上げを判断するにあたっては、個々の経済指標を十分に見極めることが必要となります(図表2)。

米利上げを控え日本株はやや神経質な動きに、ドル円の上昇も比較的抑制されよう

 現時点で、日本株とドル円相場に関する見方に変更はありません。世界の金融市場は、米国の利上げ開始に対する警戒から、夏場はやや神経質な相場展開となる可能性があります。日本株についても、米利上げを前に米国株が調整色を強めた場合、一時的であれその動きにつられる場面も予想されます。ただ利上げという材料を消化した後、日本株は年末にかけて持ち直しに転じる公算が大きいと思われます。

 また為替市場は米国の利上げ開始時期を巡る思惑から、引き続きドル主導の相場展開が見込まれます。ただ米国の利上げは極めて緩やかなペースとなり、日銀の追加緩和も当面見送りとみていますので、ドル円の上昇は比較的抑制され、年内に130円を超えてドル高・円安が進むことは難しいのではないかと現時点ではみています。 

  150730 図表1 150730 図表2

 (2015年7月30日)

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