中国株に思うこと(その1)
市川レポート(No.118) 中国株に思うこと(その1)
- 上海総合指数は昨年半ばから今年6月まで約153%上昇し、7月にかけ約35%下落。
- 結局今回も、個人投資家の行き過ぎた行動を政府が強制的に是正するという格好に。
- 中国株は資本規制下でもボラティリティは大きく、市場改革には時間を要しよう。
上海総合指数は昨年半ばから今年6月まで約153%上昇し、7月にかけ約35%下落
上海総合指数は昨年半ばから上昇基調が強まり、今年3月に心理的節目の3,500ポイントを突破しました。その後は上昇ペースが一気に加速し、6月12日の取引時間中に一時5,178ポイントの高値をつけ、昨年6月末からの上昇率は152.8%に達しました。株高が一気に進行した理由として、追加的な金融緩和や公共投資の拡大などで国内の経済成長が支えられるとの見方が市場で強まったことなどが挙げられます。
しかしながら上海総合指数の予想株価収益率(PER)が6月12日時点で20倍を超えると、その後は急ピッチの上昇に対する警戒感から利益確定の売りが広がりました。同指数は7月9日の取引時間中に一時3,373ポイントの安値をつけ、6月12日の高値から34.9%下落しました。これに対し中国政府は株価維持政策(PKO)を含む株価対策を積極的に打ち出し、株価はいったん落ち着きを取り戻しています(図表1)。
結局今回も、個人投資家の行き過ぎた行動を政府が強制的に是正するという格好に
中国の株式市場は機関投資家が十分に育っておらず、売買の7割程度を個人投資家が占めるといわれており、心理的な要因で株価の変動性(ボラティリティ)が急拡大する傾向があります。そのため市場の過熱やパニック売りを解消するにあたって政府が市場に介入せざるを得ず、また相場変動が大きいほど政策も市場原理から乖離した内容となってしまいます。まさに今回も、個人投資家の行き過ぎた行動を政府が強制的に是正するという格好になりました。
中国株は資本規制下でもボラティリティは大きく、市場改革には時間を要しよう
一般に新興国の金融市場には海外投資家に対する規制が多く存在します。これは規模が小さく流動性も限られている市場を、潤沢な資金を持つ海外投資家に規制なく開放してしまうと、海外投資家によって巨額の投機取引が行われた場合、自国の市場と経済は深刻な打撃を受けてしまう恐れがあるからです。中国株の取引にも規制は存在しており、外国人投資家は適格国外機関投資家(QFII)制度、人民元建て適格国外機関投資家(RQFII)制度、上海・香港相互株式投資制度を通じて中国国内で人民元建ての株式を取引することができますが、金額など一定の制限が設けられています。
ただ中国の株式市場の規模は決して小さくありません。中国の株式市場の時価総額は6月末時点で約8.1兆米ドルと、東京市場(約5兆米ドル)を上回っています(図表2)。中国では株式市場の規模の拡大とともに個人投資家の存在感も大きくなり、そのため海外投資家による投機は十分抑制されていても、結局は個人投資家の思惑に相場が振り回されることになり、政府はその対応に追われています。
このような状況を改善するためには、個人投資家に対する株式投資の啓蒙や、国内機関投資家の育成などの取り組みが必要ですが、直ちに成果を出すことは難しいと考えます。また将来的には国内金利の自由化、人民元の完全変動相場制への移行という流れに沿って、海外投資家による人民元建て株式取引の自由度も次第に高まってくると思われますが、これら金融市場の改革が実現するにはまだ時間がかかるとみられます。そのため中国株については、いましばらく「ボラティリティの拡大⇒政府の介入」という構図が続くものと思われます。次回のレポートでは、このような中国株とどう向き合うかについて考えてみたいと思います。
(2015年7月27日)
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