資源価格の下落と関連市場の動き

市川レポート(No.112) 資源価格の下落と関連市場の動き

  • ギリシャ情勢の混迷と中国株の急落を受け、7月に入り資源価格の下げが加速。
  • 資源価格の下げに連れて産油国通貨や米国のハイイールド債券およびMLPも下落。
  • 資源価格全般に目先は落ち着きどころを探る展開、長期的には低位での推移を予想。

 
ギリシャ情勢の混迷と中国株の急落を受け、7月に入り資源価格の下げが加速

 7月に入り資源価格の下げが加速しました。ギリシャ情勢が一段と混迷するなかで中国株の下落が続き、金融市場全体がリスクオフ(回避)の動きを強めたことが主因です。ロンドン金属取引所(LME)で取引されている6種類の工業用金属で構成されるLMEX指数は、6月30日から7月7日までの間、一気に5.6%下落しました。一方、原油価格の代表的な指標であるWTI原油先物価格は、5月以降1バレル=60ドル前後で推移していましたが、6月30日から7月8日までで13.2%急落しました。

 原油安については米国の要因も影響したと思われます。具体的には、6月26日時点の国内原油在庫が9週間ぶりの増加となったことや(米エネルギー省、7月1日公表)、米国の石油リグ(掘削装置)稼働数が今年初めて増加したことが(ベーカー・ヒューズ社、7月2日公表)、需給悪化懸念を強めたと推測されます。なお鉄鉱石(中国天津港渡しの鉄含有量62%)の価格は、中国の株安が景気に悪影響を及ぼすとの見方を主因に、6月30日から7月8日までに24.9%下落しました。

資源価格の下げに連れて産油国通貨や米国のハイイールド債券およびMLPも下落

 このような資源価格の動きを受け、関連市場も大きく反応しました。為替市場では、原油安を受けてカナダドル、ノルウェークローネ、ロシアルーブルなどの産油国通貨が減価し(図表1)、また鉄鉱石価格の下落を受けて、豪ドルやブラジルレアルなどの主要生産国通貨が減価しました(図表2)。さらにエネルギー関連企業の起債が多い米ハイイールド債券や、資源関連事業の多いMLP(Master Limited Partnership、米国で行われる共同事業形態のひとつ)も小幅安となっています。そのため原油や鉄鉱石など資源価格の下落が今後も続いた場合、交易条件の悪化を通じた資源国経済への影響や、ハイイールド債券など関連アセットクラスの一段安が懸念されます。

資源価格全般に目先は落ち着きどころを探る展開、長期的には低位での推移を予想

 なお中国政府が矢継ぎ早に株価対策を打ち出したことで、中国株は7月9日以降いったん落ち着きを取り戻しています。またユーロ圏19カ国は7月13日、ギリシャの金融支援再開について条件付きで合意しました。これを受けてLMEX指数や鉄鉱石価格には7月に入ってからの下げ幅を縮める動きがみられます。そのため資源価格全般に、目先は中国株やギリシャの動向をにらみ、落ち着きどころを探る展開を予想します。仮に中国株やギリシャ問題が再度懸念される状況となっても、これらが直接のきっかけとなって世界的な金融危機が起こる可能性は極めて低いと思われ、資源価格全体がここから加速度的に下落する事態は回避されるとみています。

 しかしながらその一方で、米国の利上げを控えた流動性縮小懸念や中国経済の成長ペース鈍化の見通しは、先物も含めた資源価格の重しになります。また7月14日、イランの核開発を巡る同国と欧米など6カ国との協議が最終合意に達しました。イランは現在、原油の輸出を制限されていますが、経済制裁が段階的に解除されれば、国際市場への原油供給量は徐々に増加する見通しです。以上を勘案した場合、資源価格は全般にこの先数カ月にわたり低位で推移することも考えられますが、資源輸入国にとっては大きな恩恵となりますので、世界全体でみれば緩やかな経済成長を支える要因になると思われます。

 

150715 図表1150715 図表2

(2015年7月15日)

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