ギリシャ問題を巡る主要アセットクラスの動き

市川レポート(No.104) ギリシャ問題を巡る主要アセットクラスの動き

  • 株価や国債などは先週からリスクオン→リスクオフ→リスクオンの流れに変化。
  • ただユーロは欧州株が上昇するリスクオンの際に売られ、リスクオフで買われた。
  • ギリシャ問題がアセットクラス全体に与える影響は意外と限定されている可能性も。

株価や国債などは先週からリスクオン→リスクオフ→リスクオンの流れに変化

 金融市場はギリシャに関するニュースのヘッドラインに一喜一憂する展開が続いています。そこで、①ギリシャ問題に楽観的な見方が広がった先週1週間、②ギリシャが突如国民投票実施を表明した週末を挟む先週末6月26日から週明け29日まで、③金融支援打ち切りとなった6月30日を挟む6月29日から7月1日まで、これら3期間における主要アセットクラスの変化を確認します(図表1)。

 日米欧の主要株価の変化率と10年国債の利回り変化幅をみると、概ね①ではリスクオン(株高と利回り上昇)、②ではリスクオフ(株安と利回り低下)、③ではリスクオン(株高と利回り上昇)となっています。ただ米国株をみると、ギリシャ問題に楽観的な見方が強かった①の期間に小幅安となっています。米国ではギリシャ問題もさることながら、やはり米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げに対する警戒が株価に大きな重しとなっているのではないかと思われます。 

ただユーロは欧州株が上昇するリスクオンの際に売られ、リスクオフで買われた

 一方、為替の動きはやや複雑です。3期間のニューヨーク市場終値を比較すると、ドル円は①で1円14銭のドル高・円安、②で1円31銭のドル安・円高、③で63銭のドル高・円安となっていますので、株価や国債と同様、リスクオン→リスクオフ→リスクオンの流れと解釈できます。これに対しユーロドルは、①でユーロ安・ドル高、②でユーロ高・ドル安、③でユーロ安・ドル高が進行しました。つまりギリシャ問題に楽観的な見方から株高、利回り上昇、ドル高・円安が進むなかでユーロは下落し、悲観的な見方から株安、利回り低下、ドル安・円高が進むなかでユーロは上昇したことになります。

 この理由の1つとして、欧州株のヘッジに絡む為替取引の影響が挙げられます。例えばユーロ建て欧州株の為替変動リスクをヘッジ(回避)していた場合、欧州株が下落すればユーロ売りヘッジの金額も減らす必要があるため、ユーロを買い戻す取引が発生します。このような為替フローが今回の相場にもある程度影響したのではないかと推測されます。 

ギリシャ問題がアセットクラス全体に与える影響は意外と限定されている可能性も

 その他のアセットクラスの動きをみると、WTI原油先物価格は①では小動きでしたが、②、③では値を崩しています。特に7月1日の下げは米国の原油在庫が9週間ぶりに増加したことが材料視されました。原油の軟調な動きを受け、MLP(Master Limited Partnership、米国で行われる共同事業形態のひとつで資源関連事業が多い)の代表的な指数であるアレリアンMLPトータルリターン指数も①~③の期間で低迷しています。また米国のリート指数とハイイールド指数は③においてようやく反発しましたが、ともに年初からのパフォーマンスは芳しくなく、こちらも利上げに対する警戒感が強いように見受けられます。

 以上、ごく短期間における主要アセットクラスの動きを確認しましたが、原油は在庫など固有の材料に大きく反応しており、米国の株式、リート、ハイイールドは、利上げをより強く意識している様子が窺えます。このようにギリシャ問題だけが足元のアセットクラスの方向性を決めている訳ではありません。そのため、まだ予断は許さない状況ではありますが、ギリシャ問題がアセットクラス全体に与える影響は意外と限定されている可能性もあり、時間の経過とともにその傾向は強くなるのではないかとみています。

 150703 図表1

 (2015年7月3日)

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