過去の米利上げ局面における為替と株価の動き(その2)
市川レポート(No.99) 過去の米利上げ局面における為替と株価の動き(その2)
- 87年の利上げ局面では通貨に関する国際合意や金融ショックが相場の方向性を主導。
- 94年の利上げ局面では米国の通商政策や連続利上げが相場に大きく影響。
- 99年の利上げ局面では米国の連続利上げと日本の景気回復が相場の材料に。
87年の利上げ局面では通貨に関する国際合意や金融ショックが相場の方向性を主導
前回のレポートでは、過去の米国の利上げ局面において為替や株価がどのように推移したか、利上げ実施日の前後それぞれ3カ月間における値動きを確認しました。ただ為替や株価は金融政策以外の材料にも多く影響を受けるため、当時の国際的な「政治情勢」や「経済環境」を改めて確認しておくことも必要と思われます。米国では、①1987年9月4日、②1994年2月4日、③1999年6月30日、④2004年6月30日が、直近4回の利上げサイクルにおける最初の利上げ実施日です。以下、それぞれの時代背景を振り返ります。
①1987年の利上げ局面:1985年9月22日、先進5カ国(G5)の蔵相と中央銀行総裁は、ドル高是正のために協調介入と政策協調を実施することで合意しました(プラザ合意)。その後は各国によるドル売り介入と協調利下げが行われ、為替市場では大幅なドル安・円高が進行しました。そこで1987年2月22日のルーブル合意でドルの安定と政策協調の推進が確認されたのですが、ドル安の流れは変わらず、またドイツがインフレ抑制のために7月以降引き締め気味の金融姿勢に転じたため、市場では国際協調体制への懸念が強まるようになりました。このような状況下、8月11日に米連邦準備制度理事会(FRB)議長となったグリーンスパン氏は、9月4日に公定歩合の引き上げを決定しました。先行きの協調不安や米金利上昇懸念などの要因が重なり、10月19日に米国株式市場は暴落し(ブラック・マンデー)、日本にも悪影響が及びました。
94年の利上げ局面では米国の通商政策や連続利上げが相場に大きく影響
②1994年の利上げ局面:1994年は日本の巨額の貿易黒字を背景に、米国からの円高圧力が強まった時期でした。為替市場では米国のドル安容認観測が広がり、ドル安・円高の動きが顕著となりました。なお米国では雇用の増加など景気の持ち直しが明確となったため、FRBは2月4日に利上げに踏み切りましたが、この時の利上げは1995年2月1日までの約1年間に7回行われ、フェデラルファンド(FF)金利の引き上げ幅は累計3%に達しました。一方、日本では円高の進行が嫌気され、年末にかけて株価の下落基調が強まるなか、日銀による金融緩和が継続されました。
99年の利上げ局面では米国の連続利上げと日本の景気回復が相場の材料に
③1999年の利上げ局面:1997年のアジア通貨危機、1998年のロシア危機を経て世界の金融市場が落ち着きを取り戻し、米国の景気拡大が確認されると、FRBは1999年6月30日に金融引き締めを開始しました。利上げは2000年5月16日までの約11カ月に6回行われ、FF金利の引き上げ幅は累計1.75%となりました。一方、日本では日銀が1999年2月12日にゼロ金利政策を導入し、景気回復の動きがみられるようになり、日経平均株価も底堅く推移しました。なお為替市場では日本経済の回復期待などを背景とする円買いドル売りの動きが強まりました。
このように当時の国際的な「政治情勢」や「経済環境」は、為替や株価に極めて大きな影響を与え、相場の方向性を主導していたことが分かります。次回のレポートでは残りの2004年の利上げ時期における政治・経済情勢を整理した上で、年内に予想される米国の利上げを踏まえて為替や株価の動きを展望します。
(2015年6月24日)
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