豪州金融政策と豪ドル相場の見通し

2015/06/04

市川レポート(No.85) 豪州金融政策と豪ドル相場の見通し

  • RBAは金融緩和効果を見極めるべく、しばらく政策金利を据え置くと思われる。
  • 豪ドルは対米ドルで振れ幅を伴いながら再び0.80米ドル台乗せを窺う展開を予想。
  • 豪ドル円は目先、1月高値の98円42銭水準の回復を試すとみる。

 

RBAは金融緩和効果を見極めるべく、しばらく政策金利を据え置くと思われる

 オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)は6月2日の理事会において、政策金利であるオフィシャルキャッシュレートを2.0%に据え置くことを決定しました。今回は声明で再び緩和バイアスが示唆されるのではないかとの見方がありましたが、結局、緩和的な金融政策が必要である旨が声明に記されたものの、明確なガイダンスは示されず、据え置きが発表された直後に豪ドルは対米ドル、対円ともに上昇しました。

 声明における物価判断は前回とほぼ変わらず、この先1、2年はインフレターゲットに沿った物価の伸びになるとの見通しが示されました。景気判断については、個人消費が改善し、住宅建設と輸出が増加したとの認識が示された一方、設備投資の弱さが民需の重しとなる状況が来年も続くとの見方が前回に引き続き示されました。そのため経済成長は続くとしながらも、「長期平均をいくらか下回る伸び率になる」と、やや慎重な文言が追加されました。RBAは金融緩和効果を見極めるべく、しばらく政策金利を据え置くと予想しますが、市場では追加利下げの余地は残るとみる向きもあります。  

豪ドルは対米ドルで振れ幅を伴いながら再び0.80米ドル台乗せを窺う展開を予想

 豪ドルは3月から4月にかけて1豪ドル=0.75米ドル台で底固めを終え、5月中旬には一時0.81米ドル台後半まで上昇しました。背景には鉄鉱石価格の持ち直しや、RBAの利下げ打ち止め感の強まりなどがありますが、ハト派的な内容となった3月米連邦公開市場委員会(FOMC)以降の米ドル全面安の動きも大きく影響したと思われます。その後、5月22日に米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が年内利上げの可能性を示唆すると、米ドルは全面高に転じ、豪ドルは0.76米ドル水準まで下落しました。

 このように為替市場は米ドル主導の相場展開となっており、豪ドルの対米ドル為替レートは、今後も米国の利上げ時期を巡る思惑に左右され続ける可能性があります。ただ鉄鉱石価格の持ち直し傾向が続いていることや、6月3日に発表されたオーストラリアの1-3月期実質GDP成長率が前期比+0.9%と市場予想(同+0.7%)を上回り、前期の同+0.5%から伸びが加速したことなど、豪ドルにとっての好材料も見受けられます。現在、豪ドルは対米ドルで反発地合いに転じつつあり(図表1)、この先も振れ幅を伴いながら緩やかな上昇基調を維持し、再び0.80米ドル台乗せを窺う展開を予想します。

豪ドル円は目先、1月高値の98円42銭水準の回復を試すとみる

 豪ドル円は節目の1豪ドル=100円を意識しつつ底堅い動きが続くとみていましたが、5月下旬からの米ドル全面高、すなわち米ドル高・豪ドル安、そして米ドル高・円安が進むなかで、豪ドルと円の通貨ペアは方向感に欠ける動きとなり、豪ドル円は94円台から95円台を中心に揉み合いが続きました。しかしながら6月2日のRBA理事会、6月3日の1-3月期実質GDP成長率の発表を経て、豪ドル円は上昇の勢いが戻りつつあります(図表2)。引き続き節目の100円を意識しながら、まずは目先、1月高値である98円42銭水準の回復を試すとみています。

 150604 図表1150604 図表2

 (2015年6月4日)

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