ドル円相場と日本株の見通し

 市川レポート(No.79) ドル円相場と日本株の見通し

  • 為替はドル主導の展開で、「円安」相場ではなく「ドル高」相場。
  • ドル円の上値目途は現時点で125円、当面はドル高円安地合いが続く見込み。
  • 日本株は振れ幅を伴いつつ上昇基調を維持するとの見方は不変。

 

為替はドル主導の展開で、「円安」相場ではなく「ドル高」相場

  ドル円相場の見通しと日本株の見通しについては、最近それぞれ5月25日付けのレポートと5月21日付けのレポートでお話をしました。ただドル円がすでに123円台を回復するなか、日本株への影響も気になるところです。そこで今回はドル円相場と日本株を取り巻く材料を改めて整理し、今後の見通しについて簡単に確認しておきます。

 ドル円は昨日、2月9日から続いていた118円台前半から122円付近までのレンジを上抜け、ドル高円安が加速しました(図表1)。為替市場のメインテーマは依然、「米利上げ開始時期を巡る思惑」と考えています。ドル主導の相場展開が続くなか、先週末のイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の年内利上げを想起させる発言に、このところの米経済指標の改善が加われば、「ドル高」相場となることは極めて自然な流れです。また5月25日付けのレポートでも触れていますが、①通貨先物取引では投機筋が円売りポジションを大幅に減らしており、円売りポジションを大きく積み上げる余力があること、②通貨オプション市場では、5月に入りドル高円安方向を予想する参加者が急増し、ドル円のリスク・リバーサルは足元で大きくドルコール(円プット)オーバーの状態にあること、これらの投機的な動きもドル高円安の進行にある程度関与したと推測されます。  

ドル円の上値目途は現時点で125円、当面はドル高円安地合いが続く見込み

  一方、国内に目を向けると、日銀は5月22日の金融政策決定会合で政策方針の現状維持を決定し、足元の景気判断を小幅に上方修正しました。また黒田総裁は同日の記者会見で、現時点で追加緩和が必要とは考えていないとの見解を示しており、日銀による追加緩和への期待は大きく後退しています。また4月の貿易統計速報(通関ベース)は、前月の黒字から小幅ながらも再び赤字に戻りましたが、収支は改善傾向にあります。これらを踏まえると、大幅な「円安」相場にはなりにくいと思われます。

 金融危機前の2007年6月につけた高値124円14銭水準が視野に入りつつあり、ドル円はこの水準への到達を試すものと思われます。ただ前述の通りドル主導の相場であることから、仮に年内に米利上げが開始され、その後の利上げペースが極めて緩やかなものになれば、ドルの上昇ペースもそれに沿った動きとなる可能性があります。ドル円の上値目途は現時点で125円とみており、当面はドル高円安地合いが続く見込みです。

日本株は振れ幅を伴いつつ上昇基調を維持するとの見方は不変

 日本株についても5月21日付けレポートでの見方から変更はありません。米利上げとドル高を警戒する米株の下げにつられる場面もあると思いますが、過度に懸念する必要はありません。利上げは景気回復の証左であり、ドル高も長期的にみれば米株式市場全体への影響は限定的です。マクロ経済、株式需給、企業業績など、日本株を取り巻く環境は依然良好で、日経平均株価は目先2000年4月につけた高値2万833円21銭を目指すとみています。なお米利上げ開始は9月と見込んでおり、その前後で株価の振れ幅の拡大が予想されますが、上昇基調は維持され9月末までに2万1,000円は到達可能と考えます。年内を展望した場合、相場の上昇モメンタムが過度に強まれば、その水準を上振れる可能性も想定しておく必要があると思われます。 

150527 図表1150527 図表2

(2015年5月27日)

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