日米関税合意に関する両国認識の相違点

2025/08/07

日米関税合意に関する両国認識の相違点

          • 赤澤大臣は自動車関税の早期引き下げ要求と相互関税の内容確認のため8月5日から訪米中。
          • 自動車関税に関する大統領令は未発令、相互関税の特別措置はEUのみで日本に適用されず。
          • 赤澤大臣は6日にラトニック商務長官と会談、株式市場は比較的冷静に追加の情報を待つ様子。

    赤澤大臣は自動車関税の早期引き下げ要求と相互関税の内容確認のため8月5日から訪米中

    赤澤亮正経済財政・再生相は、8月5日から9日まで5日間の日程で、米ワシントンを訪問しています。今回の目的は、米国に自動車関税の早期引き下げを求めることと、相互関税の内容を確認することです。そもそも米国との関税交渉については、相互関税と自動車関税の税率を15%とすることで7月22日に合意していましたが、その後、日米両国の認識にずれがあることが明らかになりました。

    例えば、合意事項の進捗管理について、米国側は四半期ごとに日本の実施状況を評価し、トランプ米大統領が不満を感じれば関税を再度引き上げるとの考えを示していますが、日本側は交渉で議論していないとの見解で、履行状況は特別チームで管理するとしています(図表1)。このほかにも、米国産のコメの購入や対米投資などに関しても、両国の主張に相違点がみられます。

    自動車関税に関する大統領令は未発令、相互関税の特別措置はEUのみで日本に適用されず

    前述の通り、7月22日の日米関税交渉で、相互関税と自動車関税は15%で合意しましたが、適用時期は決まりませんでした。その後、トランプ米大統領は7月31日、相互関税の新たな税率を約70カ国・地域に8月7日から課す大統領令に署名し、日本の相互関税15%は、8月7日より適用されることになりました。ただ、7月31日に自動車関税の税率修正に関する大統領令は発令されませんでした。

    なお、7月31日の大統領令には、欧州連合(EU)に対する特別な措置が盛り込まれました。具体的には、既存の関税が15%未満の製品には一律15%の関税が課され、15%以上の製品には相互関税が課されず、既存の関税率が適用されます。日本政府の説明では、7月22日の日米関税合意で、日本にもこの措置が適用されることになっていましたが、7月31日の大統領令には、日本に適用する旨の記載はありませんでした。

    赤澤大臣は6日にラトニック商務長官と会談、株式市場は比較的冷静に追加の情報を待つ様子

    8月6日に公表された米連邦官報においても、相互関税の特別措置はEUのみが対象となり、日本は対象となっていないことが確認されました。赤澤大臣は同日、ラトニック米商務長官と会談しましたが、日本政府によると、赤澤大臣は会談のなかで、相互関税に関する合意内容を改めてラトニック氏に確認した上で、合意内容を直ちに実施するよう求めたとのことです。

    日米関税合意が伝わったのは日本時間7月23日の午前8時過ぎでしたので、7月22日を起点に昨日までの国内株式市場の動きをみると、日経平均株価は2.6%、東証株価指数(TOPIX)は4.6%、自動車を含む輸送用機器指数は6.8%、それぞれ上昇しています(図表2)。今のところ国内の株式市場には、それほど強い警戒感はみられず、関税に関する追加情報を比較的冷静に待つ様子がうかがえます。


    (2025年8月7日)

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