米財務長官人事とトランプ関税引き上げ発言と市場の反応について

2024/11/27

米財務長官人事とトランプ関税引き上げ発言と市場の反応について

    • ベッセント氏の米財務長官指名を受け、市場は米長期金利低下、ドル安、日米とも株高の反応。
    • その後トランプ氏の関税引き上げ発言で市場はリスク回避ムードに、人民元などが対ドルで大幅安。
    • ただ、日本株などは2016年当時より総じて小動き、トランプ政権も2回目となり、冷静に対応中か。

ベッセント氏の米財務長官指名を受け、市場は米長期金利低下、ドル安、日米とも株高の反応

トランプ次期米大統領は11月22日、財務長官に投資ファンド経営者のスコット・ベッセント氏を指名しました。ベッセント氏はトランプ氏に対し、「3-3-3」政策(①2028年までに財政赤字をGDP比で3%まで削減、②規制緩和で実質GDP成長率を3%に押し上げ、③原油生産を日量で300万バレル増産)を提言しており、減税や規制緩和など、トランプ氏が公約で掲げた政策を推進していくとみられます。

週明け25日の日本市場では、ベッセント氏が財政規律を重視するとの見方から、前週末に4.40%水準で取引を終えた米10年国債利回りが朝方一時4.33%水準まで低下すると、為替市場では日米金利差の縮小を意識したドル売り・円買いが進み、日経平均株価は前週末比496円ほど上昇して取引を終えました。米国市場でも米10年国債利回りの低下は続き、ダウ工業株30種平均など主要株価指数が上昇しました。

その後トランプ氏の関税引き上げ発言で市場はリスク回避ムードに、人民元などが対ドルで大幅安

日本時間の翌11月26日の朝方、トランプ氏は中国からメキシコなどを経由して合成麻薬が米国に流入していることへの対抗措置として、中国からのほぼ全ての輸入品に対し10%の追加関税をかけると表明しました。また、カナダやメキシコに対しても、大統領就任初日に25%の関税を課すための大統領令に署名すると発言しました。実現すれば、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)による幅広い分野での関税撤廃は停止となる恐れがあります。

トランプ氏の発言を受け、投資家の間にリスク回避ムードが広がると、26日の日経平均は前日比338円ほど下げて取引を終了、ドル円はリスク回避の円買いが優勢となり、ドル安・円高が進行しました。また、関税強化の可能性が警戒され、人民元、カナダドル、メキシコペソは対ドルで大きく下落しました。なお、米国市場では、関税引き上げによる生産コスト増の懸念から、自動車株の下げが目立ちましたが、主要株価指数は上昇しました。

ただ、日本株などは2016年当時より総じて小動き、トランプ政権も2回目となり、冷静に対応中か

このように、足元の市場は、トランプ氏の閣僚人事や発言に対し、敏感に反応しやすい状態にあると思われます。ベッセント氏は財政規律を重視するという声も聞かれますが、次期トランプ政権の財務長官である以上、トランプ氏の政策を遂行すると考えるのが妥当であり、財政規律への期待は難しいとみています。また、関税引き上げも、相手に強い姿勢を示し譲歩を引き出すいつもの交渉術であり、実際は相応に時間をかけて行われる見通しです。

なお、日経平均などの動きについて、2016年の大統領選後と今回の大統領選後を比較すると、今回は2016年当時よりも総じて小幅な動きとなっていることが分かります(図表1)。やはり、トランプ政権も2回目ということで、市場には免疫ができており、2016年当時よりも冷静に状況を見守っている様子がうかがえます。また、日本株や円相場については、国内のいくつか重要な材料(図表2)も見極めている状況にあると思われます。

 

 

 

(2024年11月27日)

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
主要国のマクロ経済や金融市場に関する注目度の高い材料をとりあげて、様々な観点から分析を試みます。
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものであり、投資勧誘を目的として作成されたもの又は金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会