日本企業と投資家の間に存在するギャップとは何か
日本企業と投資家の間に存在するギャップとは何か
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- 生命保険協会によるアンケートの結果、企業と投資家の認識に、ギャップのある項目が確認された。
- 認識のギャップが大きい項目は中期経営計画の指標や資本コストに対するROE水準の見方など。
- ギャップ縮小には対話を通じた課題解決への取り組みが必要、実現なら日本株の評価は高まろう。
生命保険協会によるアンケートの結果、企業と投資家の認識に、ギャップのある項目が確認された
生命保険協会は、企業価値向上に向けた取り組みとして、企業(上場企業1,200社)および投資家(生命保険会社などの機関投資家208社)に2022年度の活動内容などに関するアンケートを実施し、それに基づき提言をとりまとめた報告書を作成、4月21日に公表しました。報告書は、日本株への投資を考えるにあたり、とても参考になる点が多く、以下、主なポイントをみていきます。
アンケートは、複数の項目のなかから回答を選択する形になっていますが、企業と投資家の双方に実施した設問を抽出し、結果を比較した資料も公表されています。それにより、①企業と投資家の選択が「高い水準で一致」した項目、②企業の選択が投資家を大きく上回った項目、③投資家の選択が企業を大きく上回った項目を、確認することができ、特に②と③は、企業と投資家に認識のギャップが存在する項目といえます。
認識のギャップが大きい項目は中期経営計画の指標や資本コストに対するROE水準の見方など
認識のギャップが大きい主な項目は図表の通りで、「中期経営計画の指標」(投資家には「企業経営目標として重視すべき指標」)という設問に対し、企業の選択が投資家を大きく上回った項目は、「売上高・売上高の伸び率」、「利益額・利益の伸び率」でした。一方、投資家の選択が企業を大きく上回った項目は、「株主資本利益率(ROE)」、「投下資本利益率(ROIC)」、「資本コスト」となりました。
また、「資本コストに対するROE水準の見方」では、多くの企業は「上回っている」と回答したものの、多くの投資家は「下回っている」と回答しました。そして、「投資意思決定時の判断基準の指標」(投資家には「適切だと思われる指標」)についても、企業の選択(「売上・利益の増加額」、「事業投資資金の回収期間」)と、投資家の選択(「ROIC」、「内部収益率(IRR)」)に、ギャップがみられました。
ギャップ縮小には対話を通じた課題解決への取り組みが必要、実現なら日本株の評価は高まろう
これらアンケートの結果を踏まえ、生命保険協会は、企業に対し、「資本コストを踏まえたROEの目標設定と水準向上」、「経営戦略と連動した人的資本、知的財産への投資を含む中長期的な投資戦略の情報開示・対話充実」などを提言しています。また、投資家にも、「企業に対する深い理解に基づく対話、企業の課題解決に資する中長期視点での対話を推進」、「議決権行使プロセスの透明性向上」などを提言しています。
今回の報告書で、企業と投資家の認識のギャップが改めて浮き彫りとなりましたが、そのギャップを埋めるべく、双方への提言がとりまとめられました。企業と投資家が対話を通じて課題の解決に取り組むことで、ギャップは縮小に向かい、企業の持続的な成長が期待されます。これが実現していくことで、中長期的な株式価値が向上して株式市場全体が活性化し、国内外での日本株の高い評価につながると考えています。
(2023年10月12日)
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