控えめな国内企業の2023年度業績予想と株高をどうみるか

2023/05/17

控えめな国内企業の2023年度業績予想と株高をどうみるか

    • 22年度は製造業が不調で非製造業が好調、原材料費高騰などが製造業の業績を押し下げた。
    • 23年度は売上高と営業利益は1ケタ伸びる見通しだが、経常利益と純利益は減益になる予想。
    • 控えめな業績予想だが、株主還元の動きに株価は堅調、資本効率改善の流れが続くか要注目。

22年度は製造業が不調で非製造業が好調、原材料費高騰などが製造業の業績を押し下げた

東証株価指数(TOPIX)を構成する3月期決算企業(金融とソフトバンクグループを除く)のうち、5月15日までに2022年度の決算発表を終えた企業は1,200社を超えました。決算発表の進捗率は、企業数ベースで92%を超え、決算発表はほぼ終了したといえます。2022年度の実績は、前年度比で売上高は15.8%増、営業利益は5.4%増、経常利益は2.9%増、純利益は2.1%増となり、増収増益ながら利益の伸びは1ケタにとどまりました(図表1)。

製造業・非製造業の区分では、製造業が順に16.0%増、2.6%減、3.9%減、8.4%減と、増収減益での着地となりました。一方、非製造業は15.6%増、21.6%増、12.9%増、17.4%増と、2ケタの増収増益でした。製造業が不調、非製造業が好調という傾向は、これまでの四半期決算発表ですでに確認されており、2022年度は主に原材料費の高騰などが、製造業の業績に大きな影響を与える結果となりました。

23年度は売上高と営業利益は1ケタ伸びる見通しだが、経常利益と純利益は減益になる予想

全体の経常利益は、前述の通り前年度比で2.9%増でしたが、この増益率への寄与度を業種別にみると、プラス寄与の大きい上位5業種は、卸売業(2.3%ポイント、以下pt)、陸運業(2.2%pt)、空運業(1.2%pt)、機械(0.7%pt)、海運業(0.5%pt)でした。マイナス寄与の大きい上位5業種は、石油・石炭製品(-1.5%pt)、電気・ガス業(-0.9%pt)、サービス業(-0.6%pt)、化学(-0.6%pt)、非鉄金属(-0.5%pt)となっています。

次に、企業による2023年度の業績予想に目を向けます。業績予想を公表している企業について、入手できるデータに基づき集計したところ、前年度比で売上高が2.5%増、営業利益は6.8%増、経常利益は2.6%減、純利益は5.1%減となりました(図表2)。このように、2023年度については、売上高と営業利益は1ケタ伸びる一方、経常利益と純利益は減益に転じるという見通しが示されました。

控えめな業績予想だが、株主還元の動きに株価は堅調、資本効率改善の流れが続くか要注目

さらに、2023年度の業績予想を製造業・非製造業の区分でみると、製造業は、前年度比の売上高が1.9%増、営業利益は7.6%増、経常利益は1.4%増、純利益は4.3%増という数字になりました。これに対し、非製造業は、売上高が4.1%増、営業利益は5.3%増、経常利益は8.4%減、純利益は15.0%減でした。2023年度は、製造業が増益に転じる一方、非製造業の経常利益と純利益が減益となる見通しです。

2022年度の実績は、おおむね市場の想定内の着地となり、2023年度の業績予想は、こちらもある程度、予想された通りの控えめな数字となりました。ただ、今回は自社株買いなど株主還元の強化を打ち出す企業も多くみられ、決算発表シーズンを終えた後の日本株は堅調に推移しています。ただ、一時的な株主還元では、業績予想の改善に裏付けられた株高は期待しがたく、資本効率改善に向けた企業の持続的な取り組み姿勢が注目されます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

 

 

(2023年5月17日)

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
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