日経平均株価の30,000円という水準について

2023/05/16

日経平均株価の30,000円という水準について

    • 日経平均は長期上昇トレンドのなか、4月下旬に三角保ち合いの上値抵抗線突破で上昇加速。
    • また日本株には好材料が複数浮上しており、海外勢の直近6週間の買い越し額は約2.3兆円に。
    • ただ足元の株高は業績予想の支えが小さく、株高継続には業績予想改善につながる材料が必要。

日経平均は長期上昇トレンドのなか、4月下旬に三角保ち合いの上値抵抗線突破で上昇加速

日経平均株価は5月15日、29,626円34銭で取引を終え、前営業日の5月12日に続いて終値ベースでの年初来高値を更新し、心理的節目の30,000円に近づきました。今回は、日経平均が足元で堅調に推移している背景と、今後の展望について考えます。まず、4月6日付レポートにて、日経平均は新年度入り後も長期上昇トレンド継続と判断していたため、最近の動き自体に違和感はありません。

ただ、同レポートで触れた通り、日経平均は2021年9月14日高値と2022年3月9日安値を起点とする中期的な「三角保ち合い(さんかくもちあい)」を形成しているため、しばらく横ばい推移が続くことも想定されました。なお、テクニカル分析上、株価が上値抵抗線を明確に上抜けると、大きく上昇するとされますが、日経平均は実際、4月下旬に三角保ち合いの上値抵抗線を突破し(図表1)、上昇に弾みがついたと解釈できます。

また日本株には好材料が複数浮上しており、海外勢の直近6週間の買い越し額は約2.3兆円に

その後、4月18日付レポートでは、日本株にいくつか好材料が浮上したことを指摘しました。具体的には、①インバウンド(訪日外国人)需要の回復期待が高まっていること、②東京証券取引所(以下、東証)が3月31日、上場企業に資本コストや株価を意識した経営などを要請したこと、③日銀正副総裁が4月10日の就任会見で緩和継続姿勢を示したこと、④米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が日本株の追加投資を示唆したことです。

また、日本経済新聞社がまとめた2023年の賃金動向調査(4月20日時点)では、定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた平均賃上げ率は、前年比1.54ポイント高い3.89%と、31年ぶりの高水準となり、賃金にも大きな動きがみられるようになりました。こうしたなか、海外投資家は日本株の現物を5月第1週(1~2日)まで6週連続で買い越し、金額は約2兆3,000億円に達しています(東証と名証の合計、東証のデータによる)。

ただ足元の株高は業績予想の支えが小さく、株高継続には業績予想改善につながる材料が必要

そして、国内では3月期決算企業の決算発表がほぼ終了しましたが、自社株買いなど株主還元の強化を打ち出す企業も多く、これらの銘柄を物色する動きもみられました。前述の東証による資本効率改善の要請で、低PBR(株価純資産倍率)企業の構造改革が進むとの期待が広がっているように思われます。ただ、2023年度の企業による業績予想は、総じて慎重な内容となっています。

そのため、日経平均株価の予想EPS(1株あたり利益)とPER(株価収益率)をみると、EPSが低迷する一方、PERは上昇しており(図表2)、足元の株高は、業績予想に支えられる部分が相対的に小さいといえます。日経平均の30,000円台回復は視野に入ってきていますが、その後も上昇基調を維持するには、海外景気の安定に加え、国内企業が成長持続のための構造改革を進めるなど、業績予想の改善につながる材料が追加的に必要と考えます。

 

 

(2023年5月16日)

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
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