日銀総裁人事報道を受けた金融市場の動きについて
日銀総裁人事報道を受けた金融市場の動きについて
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- 日本経済新聞は政府が日銀総裁を異次元緩和政策に携わってきた雨宮副総裁に打診と報じた。
- 報道を受け、国内市場では円相場が下落、日経平均は上昇、10年国債利回りは上昇で反応。
- 市場は当面人事関連の報に振れやすい展開、ただ次第に政策の先行きを確認する流れとなろう。
日本経済新聞は政府が日銀総裁を異次元緩和政策に携わってきた雨宮副総裁に打診と報じた
日本経済新聞は2月6日、「政府が黒田東彦日銀総裁の後任人事について雨宮正佳副総裁に就任を打診したことが5日わかった」と報じました。記事によると、「複数の政府・与党幹部が、雨宮氏に打診した」ことを明らかにし、「副総裁ポストを含めた人事案の最終調整に入って」いるとのことです。また、「岸田文雄首相は現役の副総裁であり異次元緩和の政策に携わってきた雨宮氏が適任と判断した」との見方も示されていました。
2月1日付レポート「日銀の総裁・副総裁人事と予想される市場の反応」で説明した通り、雨宮氏は総裁候補の本命の1人であり、中曽宏前副総裁、山口広秀元副総裁も総裁候補に名前が挙がっています。弊社は、この3名について、異次元緩和との距離が遠い順に、山口氏、中曽氏、雨宮氏と考えています。そのため、今回、雨宮氏の名前が報じられたことで、岸田首相は自民党最大派閥である安倍派の意向も一定程度、配慮したと推測されます。
ただ1月米雇用統計は非常に強い内容、年次改定要因を踏まえても雇用ひっ迫は継続の模様
2月6日の市場の動きをみると、ドル円はドル高・円安で反応、日経平均株価は上昇で反応となりました(図表1、図表2)。雨宮氏に日銀総裁就任が打診されたとの報に、異次元緩和の早期修正に対する市場の懸念が和らいだように見受けられます。ドル円については、2月3日の米雇用統計が市場予想を上回る強い内容となったことで、すでに先週末からドル高・円安が進行していましたが、その流れが一段と強まった格好になりました。
一方、日本の10年国債は、米雇用統計を受けた米長期金利の上昇などが重しとなり、利回りが上昇(価格は下落)、一時、イールドカーブ・コントロール(YCC)の許容変動幅の上限である0.5%に近づく場面もみられました。なお、国債市場では、雨宮氏への打診の報道は特段サプライズではなく、誰が新総裁となっても、異次元緩和の修正が進むとの声も聞かれました。
市場は当面人事関連の報に振れやすい展開、ただ次第に政策の先行きを確認する流れとなろう
弊社も、新総裁が誰であれ、その任務は硬直的な金融政策を見直すことになる公算が大きく、今回の報道を受けた円安、株高の反応に持続性はないとみています。前述の通り、異次元緩和との距離は、相対的に雨宮氏が近いと思われますが、それはあくまで副総裁の立場としてのことです。仮に雨宮氏が総裁となれば、当然立場が変わるため、岸田政権の意向にも十分に配慮しながら、金融緩和の副作用に対処すると考えます。
なお、雨宮氏の総裁就任は、まだ「打診」のレベルであり、雨宮氏自身が就任に消極的との報道もみられます。また、磯崎仁彦官房副長官は同日、「そのような(政府が雨宮氏に打診したとの)事実はない」と述べており、日銀の総裁・副総裁人事については、現時点でまだ不確定なところが多いと思われます。引き続き、市場は人事関連の報道に反応しやすい展開が予想されますが、次第に政策そのものの方向性を確認する流れに落ち着くとみています。
(2023年2月7日)
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