最近の投資部門別日本株売買状況を確認する

最近の投資部門別日本株売買状況を確認する

  • 日経平均とTOPIXは先週そろって大幅高となったが、海外投資家の現物買い主導ではない模様。
  • ただ、海外投資家は先物を顕著に買い越しており、裁定取引が先週の株高要因の1つとみられる。
  • 日本株の本格的な上昇には海外投資家の現物買いが待たれるが、今しばらくは状況の見極めか。

日経平均とTOPIXは先週そろって大幅高となったが、海外投資家の現物買い主導ではない模様

日経平均株価と東証株価指数(TOPIX)は先週、そろって大幅高となりました。日経平均株価の上昇幅は1,126円19銭、上昇率は4.2%に達し、TOPIXは63.47ポイント、3.4%となりました。なお、日本取引所グループは昨日、7月第3週(7月19日から22日)の投資部門別株式売買状況のデータを公表しましたので、先週の株高を主導した投資主体を探ってみます。

まず、現物を買い越した投資主体と、その金額を確認すると、自己(証券会社などが自己勘定で行う取引)が2,723億円、海外投資家が1,920億円、信託銀行が829億円、事業法人が601億円、投資信託が198億円でした(図表1)。これに対し、個人は5,699億円の売り越しとなりました。これをみる限り、海外投資家の現物買いが先週の株高を主導したとは言いがたく、また、個人は株価の上昇局面で積極的に売っていた様子がうかがえます。

ただ、海外投資家は先物を顕著に買い越しており、裁定取引が先週の株高要因の1つとみられる

次に、先物の動きを確認してみます。大きく買い越したのは海外投資家で、買い越し額は6,916億円でした。一方、先物を売り越した投資主体と、その金額をみると、自己が3,159億円、投資信託が2,013億円、個人が1,931億円、信託銀行が899億円、事業法人が114億円でした。先物については、海外投資家の買い越しが顕著であり、これが先週の株高に相応に影響したと推測されます。

先物価格の動きが、現物価格に影響を与える1つの例として、「裁定取引」があげられます。例えば、海外投資家が先物を積極的に買い、先物価格が大きく上昇した場合を考えてみます。この時、裁定業者(主に証券会社)が、一時的に割高となった先物を売り、同時に現物を買う「裁定買い取引」を行えば、現物価格の上昇要因になります。先週は、このような取引が行われた可能性も考えられます。

日本株の本格的な上昇には海外投資家の現物買いが待たれるが、今しばらくは状況の見極めか

なお、海外投資家について、一般に現物を取引する主体には、中長期的な視点で運用を行う年金などが含まれ、先物を取引する主体には、短期的な視点で売買を行う投機筋などが含まれるとされます。そのため、先週先物を買った海外投資家は、比較的短い期間内に先物を売って、ポジションを解消することが想定されます。その場合、前述の裁定取引を通じ、今度は現物価格の下落要因となります。

年初からの現物と先物の累計売買代金をみると、事業法人が最大の買い越し主体で、金額は2.5兆円です(図表2)。ここには自社株買いなどが含まれると考えられます。海外投資家は、1.5兆円の売り越しで、現物の売り越しが1.9兆円、先物の買い越しが0.4兆円となっています。海外投資家が現物買いに動けば、日本株の本格的な上昇も期待されますが、今しばらく国内外の経済動向や企業業績を見極める時間帯が続くと思われます。

 

(2022年7月29日)

 

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