日銀政策委員会メンバーの顔ぶれから考える金融政策の行方

2022/07/20

日銀政策委員会メンバーの顔ぶれから考える金融政策の行方

  • 日銀政策委員会メンバーの片岡氏と鈴木氏の任期満了に伴い、高田氏と田村氏がメンバー入り。
  • 高田氏はリフレ派と一線を画すとみられており、リフレ派の若田部副総裁は来年3月に任期満了に。
  • 来年春頃の総裁・副総裁人事は注目だが、新体制で緩和方針の即転換の公算は小さいとみる。

日銀政策委員会メンバーの片岡氏と鈴木氏の任期満了に伴い、高田氏と田村氏がメンバー入り

日銀の最高意思決定機関である政策委員会は、総裁と2人の副総裁、および6人の審議委員で構成されます。これら9人のメンバーは、いずれも国会の衆議院および参議院の同意を得て、内閣が任命します。政策委員会の会合には、金融政策に関する事項を決定する「金融政策決定会合」(年8回開催)と、その他の事項の決定などを議事とする「通常会合」(原則毎週2回開催)の2つがあります。

現在の政策委員会メンバーは図表1の通りで、審議委員の片岡剛士氏と鈴木人司氏が7月23日に任期満了となります。そのため、政府は7月19日の閣議で、岡三証券グローバル・リサーチ・センター理事長の高田創氏と、三井住友銀行上席顧問の田村直樹氏を、それぞれ片岡氏、鈴木氏の後任に充てる人事を決定しました。2人の新審議委員は7月24日付で就任することとなります。

高田氏はリフレ派と一線を画すとみられており、リフレ派の若田部副総裁は来年3月に任期満了に

片岡氏と鈴木氏は安倍晋三政権下の人事でしたが、高田氏と田村氏は岸田文雄政権下で初めての日銀人事となります。なお、片岡氏は金融緩和に積極的なリフレ派とされていますが、後任の高田氏は金融緩和の副作用への問題意識が高く、リフレ派と一線を画すとみられています。そのため市場では、今回の人事について、将来の金融緩和修正に向けた岸田首相の布石と考える向きもあります。

また、政策委員会メンバーのうち、若田部昌澄副総裁もリフレ派とされていますが、2023年3月に、雨宮正佳副総裁とともに任期満了を迎えます。そして金融緩和の姿勢を強く維持している黒田東彦総裁も2023年4月に任期満了となります。そのため、次期総裁・副総裁の顔ぶれ次第では、将来的に金融政策の枠組みが変更されるという思惑が、市場参加者の間で強まることも予想されます。

来年春頃の総裁・副総裁人事は注目だが、新体制で緩和方針の即転換の公算は小さいとみる

次期総裁候補として、市場でよく名前が挙がるのは、雨宮氏と前副総裁の中曽宏大和総研理事長です(図表2)。雨宮氏は、金融政策の企画・立案を行う企画畑が長く、異次元緩和などの金融政策の設計にかかわってきました。中曽氏は、金融システムや市場の危機管理の経験が長く、国際決済銀行(BIS)市場委員会で議長を務めたこともあり、国際派として知られています。

次期副総裁人事についても、リフレ派を引き続き起用するか否か、市場の注目が集まります。総裁・副総裁人事は、来年春頃とみられますが、新体制下で早々に異次元緩和の出口模索に動くとの見方も一部にはみられます。ただ、金融政策の判断は基本的に、経済や物価の動向に応じて判断されるものであり、体制一新で緩和方針が直ちに転換される公算は小さいと思われます。

 

(2022年7月20日)

 

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