2022年5月FOMCレビュー~0.75%の利上げには慎重姿勢

2022年5月FOMCレビュー~0.75%の利上げには慎重姿勢

  • 予想通り0.50%の利上げを決定、声明で新たに中国リスクを追記し、インフレ注視の姿勢を明示。
  • バランスシート縮小の決定も予想通り、ただし0.75%の利上げは積極的に議論されていない模様。
  • FRBによるインフレ抑制への期待は、市場で形成が不十分、当面は経済指標を見極める展開か。

予想通り0.50%の利上げを決定、声明で新たに中国リスクを追記し、インフレ注視の姿勢を明示

米連邦準備制度理事会(FRB)は、5月3日、4日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標について、大方の予想通り、0.25%~0.50%から0.75%~1.00%へ引き上げることを決定しました。利上げ幅が0.50%となったのは、2000年5月以来、約22年ぶりのことです。以下、FOMC声明とパウエル議長の記者会見について、それぞれのポイントを詳しくみていきます。

まず、FOMC声明では、景況判断について、全般的な経済活動は1-3月期にわずかに縮小したものの、家計の支出と企業の設備投資は力強さを保ち、雇用情勢は堅調で、物価の伸びは高止まりしているとの見解が示されました。また、リスク要因として、中国の都市封鎖(ロックダウン)による供給網(サプライチェーン)の更なる混乱が新たに追記され、インフレリスクを強く注視する姿勢が明示されました。

バランスシート縮小の決定も予想通り、ただし0.75%の利上げは積極的に議論されていない模様

なお、バランスシートの縮小は、6月1日から開始されることがFOMC声明に記され、具体的な縮小の手順は、別紙にて公表されました。それによると、財務省証券の月間縮小額上限は、当初300億ドルに設定されますが、3カ月後には600億ドルに引き上げられる予定です。一方、政府機関債と住宅ローン担保証券(MBS)は、当初175億ドル、3カ月後は350億ドルの予定です。

FOMC声明とバランスシート縮小の内容は、ほぼ市場の想定通りであったため、今後の利上げペースを見通す上で、FOMC後のパウエル議長の記者会見に市場の注目が集まりました。パウエル議長はその記者会見において、景気と金融市場の環境が予想通りに進めば、今後2回程度の会合で0.50%ずつの利上げを検討すべきというのがFOMCの大方の見解であると述べ、0.75%の利上げは積極的な議論をしていないと明言しました。

FRBによるインフレ抑制への期待は、市場で形成が不十分、当面は経済指標を見極める展開か

パウエル議長が0.75%の利上げ実施に慎重な考えを示したことから、5月4日の米国市場は、株価上昇、長期金利低下、ドル円はドル安・円高で反応しました(図表1)。しかしながら、翌5日にはこれらの動きが一気に反転しており、この点を踏まえると、「FRBが景気を大きく減速させることなく、インフレ抑制に成功する」という期待は、まだ市場でしっかりと形成されていないように見受けられます。

弊社は5月2日、米金融政策について、0.50%の利上げは5月と6月だけでなく、7月と9月も行われ、FF金利の誘導目標は最終的に3.00%~3.25%(従来は2.75%~3.00%)に達するとの見通しに変更しました(図表2)。なお、前述の期待が市場で形成されるには、雇用統計や消費者物価指数などの経済指標から、景気や物価の動向を見極める必要があり、今しばらく時間がかかると思われます。

 

(2022年5月6日)

 

市川レポート バックナンバーはこちら

http://www.smam-jp.com/market/ichikawa/index.html

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
主要国のマクロ経済や金融市場に関する注目度の高い材料をとりあげて、様々な観点から分析を試みます。
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものであり、投資勧誘を目的として作成されたもの又は金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会