相場の観点から考えるウクライナ情勢
相場の観点から考えるウクライナ情勢
- ロシアのウクライナへの軍事侵攻を受け世界の主要株価指数は軒並み大幅安となり原油は急騰。
- ロシアは2008年のグルジア紛争でも、親ロシア派勢力の保護を理由に、グルジアへ軍事侵攻した。
- 今回和平合意で早期終結は困難か、ただロシアの狙いがみえてきたことなどは不透明感の緩和に。
ロシアのウクライナへの軍事侵攻を受け世界の主要株価指数は軒並み大幅安となり原油は急騰
ロシアのプーチン大統領は2月24日、ウクライナ東部で特別軍事作戦を行うことを決めたと発表し、ウクライナへの軍事侵攻を開始しました。報道によると、ロシア軍の攻撃は東部だけでなく、首都キエフの郊外や南部などの軍事施設にも及んでおり、ウクライナ軍とロシア軍の戦闘が続いている模様です。また、プーチン大統領は首都キエフを標的とし、親欧米路線のゼレンスキー政権の転覆をはかっているとの見方が強まっています。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、世界の金融市場に動揺が広がりました。日経平均株価は2月24日、終値ベースで26,000円を割り込み、1年3カ月ぶりの安値をつけました。アジアや欧州の主要株価指数も軒並み大幅安となり、WTI原油先物価格は、経済制裁により、ロシア産原油の供給が減少するとの思惑から急騰し、一時1バレル=100ドル54セントの高値をつけました(図表1)。
ロシアは2008年のグルジア紛争でも、親ロシア派勢力の保護を理由に、グルジアへ軍事侵攻した
この先、ロシアの軍事侵攻がどの程度拡大していくのか、ウクライナ情勢は依然として見通しにくい状況にあります。なお、ロシアは過去にも親ロシア派勢力の保護を理由に、他国へ侵攻した経緯があります。それが2008年8月の「グルジア紛争」です。グルジア(現ジョージア)は、ソビエト連邦を構成する共和国でしたが、1991年にソビエト連邦が崩壊すると、同年に独立を果たしました。
グルジア国内には、グルジアからの独立を求める南オセチア自治州とアブハジア自治共和国があり、ロシアから独立の支援を受けていました。2008年8月7日、独立を巡って対立が続いていた南オセチア自治州の反グルジア勢力とグルジア軍が衝突すると、ロシアは8月8日、平和維持を目的として南オセチア自治州に軍を派遣し、グルジア軍との戦闘が始まりました。
今回和平合意で早期終結は困難か、ただロシアの狙いがみえてきたことなどは不透明感の緩和に
その後、グルジアとロシアは8月12日、EU(欧州連合)の仲介によって和平案で合意し、グルジア紛争は短期間で終了しました。なお、ロシアは南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の独立を一方的に承認したものの、グルジアのサーカシビリ政権を転覆させることはありませんでした。今回、グルジア紛争との類似点は多いものの、ロシアにウクライナでのかいらい政権樹立の狙いがある場合、和平合意による早期終結は難しいと考えます。
なお、2月24日は米主要株価指数が大きく反発し、ナスダック総合株価指数は前日比3%超上昇しました(図表2)。相場の観点では、ロシア側の狙いがみえてきたことや、経済制裁に国際銀行間通信協会(SWIFT)からの遮断や原油・天然ガスの輸出制限が含まれていないことは、過度な不透明感を和らげる材料です。引き続き慎重な見方は必要ですが、相場の地合いが改善に向かう展開を考慮しておいても良いと思われます。
(2022年2月25日)
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