改めて考える米債務上限問題のリスク

2021/10/06

改めて考える米債務上限問題のリスク

  • 米国債の発行残高は債務上限に近づいており、上限が引き上げられなければ米国はデフォルトに。
  • 民主党は単独で上限の引き上げが可能だが、共和党と共に対処したい考え、ただ共和党は拒否。
  • 新年度予算の減額と、上限適用停止で与野党の協議が進む可能性、デフォルトは回避されよう。

米国債の発行残高は債務上限に近づいており、上限が引き上げられなければ米国はデフォルトに

市場ではこのところ、米国の債務上限問題に対する警戒が強まっています。債務上限とは、米連邦政府が国債発行などで借金をすることができる債務残高の枠のことで、債務が法定上限に達すると、政府は議会の承認を得て上限を引き上げます。しかしながら、引き上げられない場合は、国債の新規発行ができなくなるため、債務不履行(デフォルト)に陥ることになります。

債務の法定上限は、2019年8月2日に成立した超党派予算法(Bipartisan Budget Act of 2019)で、2021年7月31日まで適用が停止されていましたが、翌8月1日から復活し、28兆5,000億ドルに設定されました。米国の国債発行残高は、すでに直近で約28兆4,289億ドルに達しているため(図表1)、米財務省は一部の公的年金基金への新たな資金拠出を制限するなどの特例措置を講じ、手元資金をやり繰りしています。

民主党は単独で上限の引き上げが可能だが、共和党と共に対処したい考え、ただ共和党は拒否

なお、米財務省は10月18日以降に政府の資金が尽きるとみており、イエレン米財務長官も10月5日、米CNBCに出演し、米議会が18日までに債務上限を引き上げられなければ、米経済が景気後退に陥る可能性があると警告しています。ただ、民主党は現在、上院でも過半数の議席を獲得しているため、財政調整措置という特別な手続きにより、民主党単独で債務上限を引き上げることができます。

しかしながら、民主党は、借金が膨れ上がることになる債務上限の引き上げについて、共和党とともに対処したい考えである一方、共和党は民主党自身で解決すべきとしており、与野党の歩み寄りはみられません。米下院は9月29日、債務の法定上限について、2022年12月まで再度適用を停止する法案を可決しましたが、共和党は同法案に反対しており、上院は通過しない見込みです。

新年度予算の減額と、上限適用停止で与野党の協議が進む可能性、デフォルトは回避されよう

米国では過去、何度も債務上限の引き上げが政治問題となってきました(図表2)。2011年は、8月2日に債務上限引き上げに関する法案がぎりぎりのところで成立したものの、8月5日に米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が米国債の格下げを発表し、市場に動揺が広がりました。また2013年は、10月16日に暫定予算および債務上限に関する法律が成立し、瀬戸際でデフォルトが回避されました。

今回も先行きは見通しにくい状況ですが、解決方法としては、①民主党が財政調整法の利用を考えている2022会計年度の予算決議案について、民主党内の意見調整と共和党への譲歩という形で減額(3.5兆ドルから2.0兆ドル前後)し、②債務上限の適用停止(下院で可決済み)をインフラ投資法案に盛り込む形で協議を進める、ということが考えられます。少なくとも米議会が進んで米国のデフォルトを選択することはないと考えます。

 

 

(2021年10月6日)

 

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