年初からの主要アセットクラスのパフォーマンスを検証する

年初からの主要アセットクラスのパフォーマンスを検証する

  • 今年はワクチン接種の進展による経済正常化期待で、昨年に出遅れたコモディティとリートが急騰。
  • 株式はワクチン接種が進む先進国株式が特に好調、ハイイールド債券は長期金利上昇が重しに。
  • 好シナリオを織り込み、リスク資産は上昇中、一段高には先行きの景気の強さを確認する必要あり。

今年はワクチン接種の進展による経済正常化期待で、昨年に出遅れたコモディティとリートが急騰

2021年1月6日付レポート「2020年主要アセットクラスのパフォーマンス検証」では、主要アセットクラスについて、2020年通年の騰落率を振り返りました。その結果、株式が大幅に上昇し、社債や国債も堅調に推移した一方、リートとコモディティの出遅れが確認されました。そこで今回は、2021年の年初から直近まで、これらの動きに変化が生じたか否かをみていきます。

2021年の6月14日までのパフォーマンスは図表の通りです。上昇率の第1位はコモディティの25.8%、第2位は米国リートの25.0%、世界リートの22.1%となっており、2020年は通年でマイナス圏に沈んだこれらのアセットクラスが、一気に巻き返す格好になっています。これは、年明け以降、世界的に新型コロナウイルスのワクチンの接種が普及し、経済活動の正常化と一段の景気回復に対する期待が市場に広がったためと推測されます。

株式はワクチン接種が進む先進国株式が特に好調、ハイイールド債券は長期金利上昇が重しに

コモディティとリートに次いで高いパフォーマンスを記録したのは株式です。上昇率の第4位は先進国株式の13.5%、第5位は新興国株式の7.6%となっています。先進国株式のパフォーマンスは昨年に引き続き好調で、ここまでの上昇率は2ケタに達していますが、新興国株式の上昇率は1ケタにとどまり、やや伸び悩んでいます。これは、新興国におけるワクチン接種のペースが、先進国に比べ総じて遅いことも一因と考えられます。

株式に続き、上昇率の第6位は米国ハイイールド債券の3.1%、第7位は世界ハイイールド債券の2.8%でした。いずれも2020年より、やや控えめなパフォーマンスにとどまっています。ハイイールド債券については、前述の経済活動の正常化期待などが強い追い風になったとみられるものの、米国などで長期金利が上昇したことで、上げ幅が抑制されたと思われます。

好シナリオを織り込み、リスク資産は上昇中、一段高には先行きの景気の強さを確認する必要あり

年初から足元まで、マイナスのパフォーマンスとなっているのが、世界投資適格社債と世界国債であり、それぞれ-1.4%、-2.4%となっています。2021年に入り、米国や欧州主要国で、長期金利の上昇傾向が鮮明になったことや、米国における金融政策の正常化も市場で意識されはじめたことなどが、これらのアセットクラスへの投資判断に大きく影響したと考えられます。

ここまでの各アセットクラスの動きをみると、世界的なワクチン接種の進展と経済活動の正常化というシナリオは、相当程度、織り込まれたと思われます。リスク資産が選好されやすい地合いは、今しばらく続くとみられますが、リスク資産の価格が一段と上昇するには、シナリオ実現後の景気の強さが必要です。そして景気を見通すには、やはり、各国の経済指標や、金融政策および経済対策の方向性を、丁寧に読み解くことが求められます。

(2021年6月16日)

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