米国の中国SMICに対する輸出規制と半導体関連銘柄の反応
米国の中国SMICに対する輸出規制と半導体関連銘柄の反応
- 米商務省は中国SMICに対する輸出について事前許可を得るよう米国企業などに求める見通し。
- 半導体製造装置が入手不可ならSMICの半導体生産拡充は困難となり、中国の国策に影響大。
- 米国の正式発表待ちだが、エンティティー・リスト入りの恐れも、株式市場は今のところ冷静な反応。
米商務省は中国SMICに対する輸出について事前許可を得るよう米国企業などに求める見通し
複数の欧米メディアは9月26日、米商務省が半導体受託生産の中国最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)に制裁を科したと報じました。報道によると、米商務省は米国企業などに対し、SMICへ特定商品を輸出する場合、その商品が軍事目的に転用される容認できないリスクがあると警告し、SMIC向けの輸出にあたっては、事前に許可を得るように求めている模様です。
SMICは同日、中国軍と無関係であるとのコメントを発表しましたが、輸出の事前許可制が発動された場合、SMICは米国企業などから半導体製造に必要な装置の供給をスムーズに受けられなくなる恐れがあります。なお、米国防総省は9月4日、SMICを事実上の禁輸リストである「エンティティー・リスト」に加えるか検討していることを同省高官が明らかにしており、制裁は事前許可制だけにとどまらない可能性があります。
半導体製造装置が入手不可ならSMICの半導体生産拡充は困難となり、中国の国策に影響大
米商務省は、すでに中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)に対しては、2019年5月に米国製品の輸出を事実上禁じる規制を発動し、エンティティー・リストにファーウェイと関連会社68社を追加していました(図表1)。その後も、ファーウェイに対する規制は段階的に強化されており、今回のSMICに対する措置も、その流れに沿ったものと考えられます。
中国政府は半導体の国産化を目指していますが、SMICはその重要な役割を担う国策企業と位置づけられています。7月には上海のハイテク企業向け市場「科創板」に株式を上場し、半導体の生産拡充のため、資金を調達したところでした。米国企業などから半導体製造装置を輸入できなくなると、最先端の半導体生産ラインを構築することが困難になると思われます。
米国の正式発表待ちだが、エンティティー・リスト入りの恐れも、株式市場は今のところ冷静な反応
SMICに対し輸出規制が発動された場合、SMICのみならず、SMICから半導体の供給を受ける企業や、SMICに半導体製造装置を供給する企業も影響を受けることになります。SMICの最大の顧客はファーウェイで、米クアルコムや米ブロードコムも名を連ねているとみられますが、これらは半導体の安定供給が得られなくなる恐れがあります。また、半導体製造装置の受注キャンセルや出荷の延期により、日系企業への影響も懸念されます。
今後は、米商務省からの正式な発表を待つことになりますが、米国による規制強化は、中国の軍事リスクを意識した面もあるため、SMICがエンティティー・リスト入りとなることも想定しておく必要があります。なお、9月28日時点の半導体関連企業の株価は図表2の通りで、米企業の株価に顕著な下げはみられませんでした。ある程度織り込み済みとの声もあり、株式市場は今のところ冷静にこの材料を受け止めていると思われます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
(2020年9月29日)
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