2020年自民党総裁選挙~3候補の政策案を比較する
2020年自民党総裁選挙~3候補の政策案を比較する
- 菅氏は「自助・共助・公助」を掲げ、行政や大企業の既得権益を打破し生活水準向上を目指す。
- 岸田氏は中間層と地方の復活による格差是正、石破氏は地域分散と内需主導型経済を主張。
- 3候補の考え方には独自色があるが、誰が勝利してもこの1年で政策が大転換する可能性は低い。
菅氏は「自助・共助・公助」を掲げ、行政や大企業の既得権益を打破し生活水準向上を目指す
自民党総裁選挙は9月8日に告示され、14日に両院議員総会で投開票が行われます。総裁選への出馬を表明している菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長の3氏は、すでに記者会見などで、自らの政策案を発表しています。そこで今回のレポートでは、3候補の政治理念を踏まえ、それぞれの政策案について主なポイントを整理・比較します(図表1)。
まず、菅氏の政治理念は「自助・共助・公助」です。自分でできることは自分でやり(自助)、自治体が助け合い(共助)、その上で政府が責任を持って対応する(公助)との考えです。競争原理を働かせるため、行政や大企業の既得権益を打破し、国民の生活水準を高めることを重視しています。地域金融機関の再編に言及し、携帯電話料金の引き下げに力を入れていく意向を示したのは、このような考え方が背景にあります。
岸田氏は中間層と地方の復活による格差是正、石破氏は地域分散と内需主導型経済を主張
次に、岸田氏の政治理念は、「分断から協調へ」です。中間層の復活による格差の是正を唱え、富の適切な分配を強化し、最低賃金の引き上げや、教育費負担を軽減していく考えを示しました。また、次世代通信規格「5G」の地方からの早期全国展開を図り、地方生活の利便性向上や、都市部との共存を実現する「デジタル田園都市国家構想」を推進し、地方復権を目指します。
そして、石破氏の政治理念は「納得と共感」です。国民が納得し、一緒にやろうと共感できる政治を目指し、地域分散と内需主導型経済の実現を柱に位置づけています。地域分散については、担当閣僚を設置し、21世紀中ごろまでに、約300万人の地方移住を実現する考えです。また、潜在成長率引き上げのため、技術革新などに重点を置く一方、賃金の適正化や、低所得者および子育て世代への支援で、消費を喚起する方針です。
3候補の考え方には独自色があるが、誰が勝利してもこの1年で政策が大転換する可能性は低い
なお、コロナ対策は3氏とも優先課題にあげており、PCR検査を拡充するということで一致しています。しかしながら、新型インフルエンザ等対策特別措置法を再改正し、自粛要請に強制力を持たせることについては見解が異なります。菅氏は感染収束後になるとの考えですが、岸田氏は議論すべきとの立場であり、石破氏は補償制度と合わせて検討すべきという考え方です。
また、アベノミクスについて、菅氏は責任を持って引き継ぎ、さらに前に進めるとしています。一方、岸田氏と石破氏は、一定の評価をするものの、軌道修正の可能性が感じられます。このように、3候補の政治理念と政策は、それぞれ独自色があるものの、新総裁の任期(来年9月まで)を踏まえた場合、誰が新総裁となっても、少なくともこの1年で、現行政策が大きく軌道修正される可能性は低いと思われます。
(2020年9月7日)
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