改めて考える日銀マイナス金利付利の影響
改めて考える日銀マイナス金利付利の影響
- 日銀の国債買い入れや銀行の貸出による日銀当座預金増加分には、マイナス金利が付利される。
- そのため日銀はマイナス金利の影響が増大しないよう金融機関に配慮し、様々な手法を導入した。
- 金融機関は日銀当座預金でのマイナス金利の影響は回避、ただ利ざや縮小問題は依然未解決。
日銀の国債買い入れや銀行の貸出による日銀当座預金増加分には、マイナス金利が付利される
今回のレポートでは、日銀によるマイナス金利付利の影響を改めて考えてみます。金融機関は、預金の一定比率以上の金額を日銀に預け入れる義務があり、預け入れに使用される口座が日銀当座預金です。この日銀当座預金の残高は現在、①基礎残高、②マクロ加算残高、③政策金利残高、という3つの階層に区分されており、①にはプラス0.1%、②にはゼロ%、③にはマイナス0.1%が、それぞれ付利されます(図表1)。
基礎残高は、おおよそ2015年の超過準備額(日銀に預け入れなければならない法定準備額を超える金額)、約210兆円と考えることができ、この残高は大きく変わりません。一方、日銀の国債買い入れ増加や銀行の貸出増加(銀行は貸出金を企業の預金口座に入金するため銀行の預金額は増加する)は、日銀当座預金残高の押し上げ要因となり、これらは基本的に、マイナス金利が付利される政策金利残高の増加分として計上されます。
そのため日銀はマイナス金利の影響が増大しないよう金融機関に配慮し、様々な手法を導入した
そのため、日銀の国債買い入れや銀行の貸出は、マイナス金利政策によって阻害されることになります。そこで日銀は、これらによる政策金利残高の増加分(マイナス0.1%付利)を、マクロ加算残高の増加分(ゼロ%付利)に移す、様々な手法を導入しました。1つは基準比率という仕組みで、これを2015年の当座預金平残に掛け合わせた金額は、マクロ加算残高に加算されます。よって、国債の買い入れ増加には、基準比率の引き上げで対処可能です。
また、貸出支援基金と被災地金融機関支援オペについて、それぞれの借入平残および2016年3月末比の増加分は、マクロ加算残高に加算されます。さらに、最近新設した、新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペと新たな資金供給手段については、それぞれの利用残高に相当する当座預金にプラス0.1%が付利され、かつ、2倍の金額がマクロ加算残高に加算されます。このように、日銀は貸出を増加させた銀行などにも配慮しています。
金融機関は日銀当座預金でのマイナス金利の影響は回避、ただ利ざや縮小問題は依然未解決
そこで、直近の日銀当座預金残高を業態別に確認してみます(図表2)。マイナス金利が付利される政策金利残高が最も多いのは信託銀行で、外国銀行、その他準備預金制度適用先(ゆうちょ銀行など)がこれに続きます。しかしながら、基礎、マクロ加算、政策金利の各残高と付利金利に基づき、日銀当座預金残高の加重平均金利を計算してみると、マイナスとなった業態は1つもありません。
このように、日銀は様々な手法で、金融機関へのマイナス金利付利の影響を緩和させていることが分かります。なお、日銀のイールド・カーブコントロールにより、国内では長期金利が低水準で推移し、銀行の貸出金利の低下要因となっています。したがって、金融機関は、日銀当座預金におけるマイナス金利の直接的な影響は避けられてはいるものの、貸出金利と預金金利の利ざや縮小の問題は、解決されないままとなっています。
(2020年5月26日)
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