強気相場は悲観の中で生まれ懐疑の中で育つ
強気相場は悲観の中で生まれ懐疑の中で育つ
- 日経平均は3月19日に年初来安値をつけた後に反転、コロナショックの「悲観の中で」買いが入る。
- 景気や業績への不安が強まるなか5月11日に半値戻しを達成、「懐疑の中で」戻り基調が継続。
- 株高の背景は実現しない恐れもある「期待」、悲観や懐疑の中で株を買うのは相応にリスクがある。
日経平均は3月19日に年初来安値をつけた後に反転、コロナショックの「悲観の中で」買いが入る
相場の格言に、「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、陶酔の中で消えていく」というものがあります。これは米著名投資家ジョン・テンプルトンの言葉で、株式市場について、多くの市場参加者が悲観的になっている時が買い場であり、逆に楽観的になっている時が売り場である、ということを意味しています。では、この格言を踏まえ、足元の株価動向を確認してみます。
世界の株式市場は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、2月下旬から3月下旬にかけて、急落しました。3月末までに、多くの国々が感染拡大抑制のため、全面的あるいは部分的にロックダウン(都市封鎖)を実施し、その結果、世界的に経済活動が冷え込みました。しかしながら、日経平均株価は3月19日に終値ベースで年初来安値をつけた後、反発に転じており、「悲観の中で」買いが入っていたことが分かります(図表1)。
景気や業績への不安が強まるなか5月11日に半値戻しを達成、「懐疑の中で」戻り基調が継続
4月に入ると、日本政府は7日、7都府県を対象として改正特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令しました。16日には対象を全国に拡大し、5月4日には、緊急事態宣言について全国を対象としたまま期限を5月6日から31日まで延長すると決定しました。また、4月下旬から本格化した、3月期決算企業による決算発表では、今年度の業績見通しを公表しない企業も目立ち、景気や企業業績の先行きに不透明感が強まりました。
こうしたなか、日経平均株価は5月11日、20,390円66銭で取引を終え、3月19日の年初来安値(16,552円83銭、終値ベース、以下同じ)から、実に約23.2%上昇しました。なお、日経平均株価は、1月20日に年初来高値となる24,083円51銭をつけていましたので、ここから3月19日までの下げ幅の半値戻し(20,318円17銭)を達成し、「懐疑の中で」株価の戻り基調が継続していることが分かります。
株高の背景は実現しない恐れもある「期待」、悲観や懐疑の中で株を買うのは相応にリスクがある
現在、欧米諸国が経済活動を段階的に再開させていることから、株式市場では、世界経済は4-6月期に最悪期を脱し、7-9月期には上向きに転じるとの「期待」が広がっています。日経平均株価の底堅い動きも、このような期待が背景にあると思われ、足元の経済指標や企業決算は、あまり材料視されていません。米国では、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数が、すでにコロナショックの下げ幅を7割強、埋めています(図表2)。
ただ、感染再拡大などが発生すれば、期待は実現しないまま終わるため、株価の再調整リスクは残ります。冒頭の格言は、相場サイクルと投資家心理を的確に表現していますが、一般に、相場が弱気から強気に転じる際、リスク許容度の高い投資家から順に、株式市場へ戻ってきます。そのため、「悲観」や「懐疑」の中で株式を買うことは、高いリターンを期待できる分、相応に大きなリスクを抱えることになり、十分な注意が必要です。
(2020年5月13日)
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