20年4月FOMCレビュー~緩和効果と治療薬効果

20年4月FOMCレビュー~緩和効果と治療薬効果

  • FRBは、政策金利とフォワードガイダンスを据え置くも、新型コロナウイルスの中期的なリスクを警戒。
  • すでに国債のほか多様な資産を購入済みであるが、パウエル議長は記者会見で追加措置を示唆。
  • FRBの流動性供給は株価の支援材料、ワクチンや治療薬の開発に関連する報道にも注目したい。

FRBは、政策金利とフォワードガイダンスを据え置くも、新型コロナウイルスの中期的なリスクを警戒

米連邦準備制度理事会(FRB)は、4月28日、29日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、大方の予想通り、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を年0.00%~0.25%で維持することを決定しました。市場の一部に、政策金利の先行き指針(フォワードガイダンス)の強化を予想する向きもありましたが、変更はありませんでした。以下、FOMC声明の主なポイントを確認していきます(図表1)。

FRBは第1段落で、経済支援に全政策手段を使うことを強く表明したあと、第2段落から第3段落にかけて、新型コロナウイルスの感染拡大の影響に触れ、「中期的には経済見通しにとって深刻なリスクとなる」との見解を示しました。第5段落では、量的緩和やレポ取引の継続を確認する一方、市場情勢を注視しながら、これらの政策を適切に調整する用意があると述べました。

すでに国債のほか多様な資産を購入済みであるが、パウエル議長は記者会見で追加措置を示唆

パウエル議長はFOMC後の記者会見で、FOMC声明に示された「中期的」とは、2021年あたりまでを指すとし、追加策として、現行制度における融資枠の拡大や、新規のプログラムの投入もできるとの積極姿勢を示しました。なお、FRBは現在、国債、住宅ローン担保証券(MBS)、商業不動産担保証券(CMBS)を必要なだけ制限なく購入しており、また、大規模な翌日物および期日物のレポ取引も実施しています。

さらに、FRBは特別目的事業体(SPV)を通じて、コマーシャルペーパー(CP)、社債、資産担保証券(ABS)を担保に、それらの発行体(ABSは保有者)向けに融資を行い、地方債を担保に、州、市、郡向けにも融資を行います。また、FRBは同じくSPVを通じて、流通市場での社債および社債ETFの買い取りや、中小企業向け融資の買い取りも実施します。

FRBの流動性供給は株価の支援材料、ワクチンや治療薬の開発に関連する報道にも注目したい

FRBの積極的な資産購入により、3月下旬以降、FRBのバランスシートは急拡大しました。一般に、中央銀行の施策で金融機関に潤沢な流動性が行き渡れば、流動性不安や信用不安は大きく後退します。実際、世界全体の株価指数は、3月下旬以降、いったん下げ止まっています(図表2)。なお、FOMC声明が公表された昨日も、米国株は大きく上昇しましたが、これは新型コロナウイルス治療薬への期待が広がったことも影響していると思われます。

米ギリアド・サイエンシズは4月29日、臨床試験を実施中の新型コロナウイルスの治療薬候補「レムデシビル」に良好な結果がでたと発表しました。治療薬として最終的に認可された場合、世界的に経済活動再開の道が開け、景気や企業業績が持ち直し、株価の上昇という連想が働きやすくなります。そのため、FRBなど中央銀行の金融政策に加え、ワクチンや治療薬の開発に関連する報道にも、引き続き注目しておく必要があります。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

 

(2020年4月30日)

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