ドル円以外の通貨ペアも年間の値幅は縮小傾向か?

市川レポート ドル円以外の通貨ペアも年間の値幅は縮小傾向か?

  • ドル円相場の年間の値幅は縮小傾向にあり、2019年は約7円94銭と過去47年間で最少幅に。
  • ユーロ円、豪ドル円、ポンド円の年間値幅についても、ドル円の値幅縮小傾向の影響がうかがえる。
  • 対ドルでは、ユーロのみ値幅縮小傾向がみられるため、マイナス金利が通貨変動の抑制の一因か。

ドル円相場の年間の値幅は縮小傾向にあり、2019年は約7円94銭と過去47年間で最少幅に

2019年12月23日付レポート「2020年のドル円相場見通し」で解説した通り、ドル円の年間の値幅は縮小傾向にあります。2019年は約7円94銭と、過去46年間で最小だった2018年の約9円99銭を更新しました。値幅縮小の背景には、主に3つの要因があると考えられます。1つめは、ドルも円も、リスクオフ(回避)で買われ、リスクオン(選好)で売られるなど、同じ方向に動く傾向があることです。

2つめは、近年、日本の経常黒字に占める貿易黒字の割合が低下し、第1次所得収支(利子・配当等の収支)の黒字の割合が上昇したことです。後者は一般に再投資される場合が多く、為替取引は発生しにくくなります。3つめは、日本では物価が伸び悩み、マイナス金利も導入されているため、日銀の政策変更の思惑で、円相場が変動する局面が相対的に少なくなったことです。いずれも構造的な要因であるため、値幅縮小傾向が続く可能性は高いと思われます。

ユーロ円、豪ドル円、ポンド円の年間値幅についても、ドル円の値幅縮小傾向の影響がうかがえる

では、ドル円以外の通貨ペアについても、年間の値幅は縮小傾向にあるのか、以下、確認してみます。具体的には、米ドル以外の通貨と日本円のペアである「クロス円」のうち、ユーロ円、豪ドル円、ポンド円を検証します。ユーロ円は、ユーロが導入された1999年から2019年までの21年間で、最小値幅は2019年の約11円63銭、次いで2018年の約12円88銭でした(図表1)。

豪ドル円は、豪ドルが変動相場制に移行した1983年から2019年までの37年間で、最小値幅は1994年の約8円79銭、次いで2017年の約8円82銭でした。参考までに2019年の値幅は4番目に小さく、2018年は7番目でした。ポンド円は、1973年から2019年までの47年間で、最小値幅は1988年の約15円33銭、次いで1987年の約16円88銭でした。参考までに2019年の値幅は11番目に小さく、2018年は4番目でした。

対ドルでは、ユーロのみ値幅縮小傾向がみられるため、マイナス金利が通貨変動の抑制の一因か

なお、ユーロ円の為替レートは、ドル円とユーロドルの為替レートを掛け合わせて算出されるため、ドル円の変動とユーロドルの変動、双方から影響を受けます。これは、豪ドル円、ポンド円についても同様です。そのため、ドル円の年間値幅の縮小傾向は、これらクロス円の年間値幅の動きにも相応の影響を与えていると考えられ、前述の検証結果を踏まえると、その度合いの強い順に、ユーロ円、豪ドル円、ポンド円となります。

また、ユーロドル、豪ドル米ドル、ポンドドルの年間値幅をまとめたものが図表2です。これをみると、ユーロドルの年間値幅にはいくらか縮小傾向がうかがえますが、豪ドル米ドルとポンドドルはそれほどではありません。日本とユーロ圏ではマイナス金利が導入され、豪州と英国では導入されていないことを勘案すると、マイナス金利が通貨変動抑制の一因として作用している可能性が考えられます。

(2020年1月14日)

 

市川レポート バックナンバーはこちら

http://www.smam-jp.com/market/ichikawa/index.html

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
主要国のマクロ経済や金融市場に関する注目度の高い材料をとりあげて、様々な観点から分析を試みます。
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものであり、投資勧誘を目的として作成されたもの又は金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会