バリュー株上昇の持続性

市川レポート バリュー株上昇の持続性

  • 日本では、年明けからバリュー株が低調だったが、9月以降は出遅れ修正の動きが顕著にみられた。
  • 日経平均構成銘柄でPBR1倍未満は100銘柄、銀行業や非鉄金属など景気敏感業種が多い。
  • 足元バリュー株は上昇に転じたが、米中協議の進展や景況感の改善次第で上昇余地は広がろう。

日本では、年明けからバリュー株が低調だったが、9月以降は出遅れ修正の動きが顕著にみられた

一般に、バリュー株とは、本来の企業価値(ファンダメンタルズ)や利益水準に対し、現在の株価が割安と判断される銘柄群のことをいいます。これに対し、グロース株とは、企業の成長性が平均よりも高いと判断される銘柄群のことをいいます。銘柄の分類にあたっては、株価純資産倍率(PBR)や、株価収益率(PER)を基準指標として用いることが多く、PBRやPERの低い銘柄は、バリュー株に分類されます。

この分類に基づき、日本株の推移を確認してみると、年明け以降、バリュー株はグロース株に比べ、低調なパフォーマンスが続きました。その後、9月に入ると、米中貿易協議の進展期待が市場で徐々に広がり、日本株は次第に水準を切り上げる展開となりました。こうしたなか、バリュー株にも見直し買いが入り、年初からの出遅れを修正する動きが顕著にみられました。

日経平均構成銘柄でPBR1倍未満は100銘柄、銀行業や非鉄金属など景気敏感業種が多い

では実際に、日経平均株価を構成する225銘柄について、PBRが1倍未満の銘柄と、1倍以上の銘柄に分けて、年初からの動きを検証してみます。2018年12月28日時点で、PBRが1倍未満の銘柄は、225銘柄のうち100銘柄で、1倍以上の銘柄は125銘柄でした。つまり、日経平均構成銘柄のうち約44%がPBR1倍割れということになります。なお、100銘柄を東証33業種で分類すると、銀行業が11銘柄で最多業種になります(図表1)。

また、PBR1倍割れの100銘柄のうち、2018年12月28日から2019年8月30日までの期間で下落したのは73銘柄でした。特に5月以降は米中対立が激化し、世界的な景気減速懸念や、国内マイナス金利環境の長期化という思惑が、市場に広がりました。その結果、銀行業、非鉄金属、化学、輸送用機器などの、景気敏感業種のバリュー株が大きく下落しました(図表2)。

足元バリュー株は上昇に転じたが、米中協議の進展や景況感の改善次第で上昇余地は広がろう

しかしながら、その後は米中貿易協議の進展期待を背景にバリュー株が急速に買い戻され、PBR1倍割れの100銘柄のうち、2019年8月30日から11月27日までの期間で上昇したのは95銘柄に達しています。一方、PBRが1倍以上の125銘柄については、2018年12月28日から2019年8月30日までの期間で5割強の71銘柄が上昇し、2019年8月30日から11月27日までの期間でも約9割の112銘柄が上昇しています。

つまり、グロース株の年初からの底堅い動きが維持されたまま、9月以降はバリュー株にも投資資金が流入しており、日本株の地合いは全体としてかなり改善しているといえます。バリュー株上昇の持続性は、米中協議の進展や景況感の改善度合いによるところが大きいと思われるため、この先、制裁関税の段階的な撤廃や、主要国の長期金利の緩やかな上昇という動きがみえてくれば、バリュー株の上昇余地は広がっていくと考えています。

(2019年11月28日)

 

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