19年9月FOMCレビュー~緩和継続で意見が分かれる

市川レポート 19年9月FOMCレビュー~緩和継続で意見が分かれる

  • 利下げは予想通りの結果、FOMC声明に大きな変更なく、経済見通しも小幅な修正にとどまった。
  • ドットの分布は市場の織り込みに比べタカ派的に、年内の金融政策の方向性でも意見が分かれた。
  • パウエル議長は従来の見解を維持、ややタカ派的なFOMCとなるも、市場の信認は得られたとみる。

利下げは予想通りの結果、FOMC声明に大きな変更なく、経済見通しも小幅な修正にとどまった

米連邦準備制度理事会(FRB)は、9月17日、18日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、大方の予想通り、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を年2.00%~2.25%から年1.75%~2.00%へ引き下げることを決定しました。ただ、市場の関心は、次回FOMC(10月29日、30日開催)以降の利下げペースに移っていましたので、その点を中心に、以下、主なポイントを確認していきます。

まず、FOMC声明について、今回特に大きな変更はなく、見通しへの不確実性が続き、政策目標達成のため適切に行動する旨の表記は維持されました。また、FOMCメンバーによる経済見通しも小幅な修正にとどまりました。実質GDP成長率の予想中央値は、2019年と2021年に0.1%ポイントずつ上方修正され、失業率の予想中央値は、2019年に0.1%ポイント引き上げられました。インフレ率の予想中央値は、総合、コアとも据え置きでした。

ドットの分布は市場の織り込みに比べタカ派的に、年内の金融政策の方向性でも意見が分かれた

次に、FOMCメンバーが適切と考える政策金利水準の分布図(ドットチャート)に目を向けると(図表1)、中央値が示唆する年間の政策変更回数は、2019年と2020年は0回(すなわち今回の利下げで打ち止め)、2021年と2022年は、0.25%の利上げがそれぞれ1回ずつとなりました。FF金利先物市場では、来年にかけて2回強の追加利下げが織り込まれていますので、それと比べた場合、ドットの分布はタカ派的といえます。

なお、改めて2019年のドットをみると、年末時点の適切なFF金利誘導目標水準について、年2.00%~2.25%(すなわち今回の利下げ決定前の水準)と考えるメンバーは5人、年1.75%~2.00%(今回の利下げによる水準)は5人、年1.50%~1.75%(今回の利下げよりも更に0.25%低い水準)は7人と、意見が分かれています。実際、今回の会合で、ボストン地区連銀のローゼングレン総裁とカンザスシティ地区連銀のジョージ総裁は据え置きを求め、セントルイス地区連銀のブラード総裁は0.5%の利下げを主張し、反対票を投じました。

パウエル議長は従来の見解を維持、ややタカ派的なFOMCとなるも、市場の信認は得られたとみる

記者会見におけるパウエル議長の論点をまとめると、①米国経済は良好な状態が続いている、②ただ、見通しに対しては貿易政策の不確実性という大きなリスクがある、③そのため、今回の利下げは景気下振れの保険である、ということになります。パウエル議長は記者会見で、金融政策の将来的な道筋を示すことはなく、状況に応じて適切な行動をとるという、従来の見解を繰り返しました。

そもそも、今回の利下げが「予防的な利下げ」である以上、FOMCは市場に過度な利下げ期待を持たせる必要はありません。不確実性のもとである米中の緊張が緩和すれば、良好な状態の米国経済に、連続利下げは不要となるからです。パウエル議長の記者会見後、米主要株価指数と米10年国債利回りは上昇に転じ(図表2)、米ドルは対主要通貨で上昇しました。ややタカ派的なFOMCでしたが、取り敢えず市場の信認は得られたと思われます。

(2019年9月19日)

 

市川レポート バックナンバーはこちら

http://www.smam-jp.com/market/ichikawa/index.html

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
主要国のマクロ経済や金融市場に関する注目度の高い材料をとりあげて、様々な観点から分析を試みます。
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものであり、投資勧誘を目的として作成されたもの又は金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会