米国の逆イールドが日本株に与える影響
市川レポート 米国の逆イールドが日本株に与える影響
- 米国では直近3度の景気後退前に、10年国債利回りが3カ月物TB利回りを下回る逆イールドへ。
- 過去平均では、逆イールドから景気後退まで1年11カ月を要し、その間ダウ平均は25%上昇した。
- 日本株は下げが目立ったが日本固有の問題によるものであり、米逆イールドに過度な警戒は不要。
米国では直近3度の景気後退前に、10年国債利回りが3カ月物TB利回りを下回る逆イールドへ
3月22日の米国市場において、米10年国債利回りが3カ月物の米財務省証券(TB)利回りを下回り、長短金利の逆転(逆イールド)現象が発生しました。逆イールドについては、2018年12月6日付レポート「米国の逆イールドに過度な警戒は不要」で一度解説していますが、この時の逆イールドは、米5年国債利回りが米2年国債利回りを下回るケースでした。
今回のレポートでは、米10年国債利回りが3カ月物の米TB利回りを下回るケースの逆イールドについて採り上げます。米国は1990年以降、3度の景気後退局面を経験していますが、改めて米10年国債利回りと3カ月物の米TB利回りの動きを確認してみると、そのいずれにおいても、景気後退局面を迎える前に、逆イールドが発生していることが分かります(図表1)。
過去平均では、逆イールドから景気後退まで1年11カ月を要し、その間ダウ平均は25%上昇した
図表1において、最初に逆イールドが発生したのは、1989年3月で、その1年4カ月後に景気後退局面を迎えました。次に逆イールドが発生したのは1998年9月で、その2年6カ月後に景気後退入りとなりました。そして次に逆イールドが発生したのは2006年1月で、景気後退はその1年11カ月後でした。つまり、逆イールド発生から景気後退まで、平均すると1年11カ月を要していることになります。
ダウ工業株30種平均の動きをみると(図表2)、逆イールドが発生した1989年3月から1990年7月の景気後退入りまで約27%上昇しています(月末値で比較、以下同様)。また、次の逆イールドが発生した1998年9月から2001年3月の景気後退入りまでは約26%上昇しています。そして、次の逆イールドが発生した2006年1月から2007年12月の景気後退入りまでは約22%上昇し、3期間の平均上昇率は約25%になります。
日本株は下げが目立ったが日本固有の問題によるものであり、米逆イールドに過度な警戒は不要
以上の結果は、2018年12月6日付レポートとほぼ同じです。そこで今回は、日経平均株価の動きも検証したところ、1989年3月から1990年7月までは約5%下落、1998年9月から2001年3月までは約3%下落、2006年1月から2007年12月までは約8%下落し、3期間の平均下落率は約5%となりました。ダウ工業株30種平均とは対照的な動きになった理由として、日本の「バブル崩壊」や「円高進行」が挙げられます(図表2)。
また、米景気後退期の株価の動きも図表2にまとめておきました。これをみると、日本株の下落は、日本固有の問題(失われた10年といわれる「長期停滞」)や、「金融危機」の影響が大きいといえます。現在の日本経済は、「バブル崩壊」、「長期停滞」、「金融危機」のいずれにも直面していません。したがって、米国で逆イールドが発生しても、直ちに日本株の下落を連想する必要はありません。ただ、米長期金利の低下による「円高進行」は、日本株の上値をおさえる要因となるため、幾分注意が必要です。
(2019年04月02日)
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