米中貿易協議~ここまでの進展と日本株への影響

 

市川レポート(No.641)米中貿易協議~ここまでの進展と日本株への影響

  • 4日間の米中閣僚級協議で構造問題に進展があったとみられ3月2日の関税引き上げは延期へ。
  • 足元で、日経平均は底堅く推移しているが、依然として期待先行、先物主導によるところが大きい。
  • 産業政策と履行検証を含め米中首脳会談で合意なら中長期投資家の現物買いも期待されよう。

4日間の米中閣僚級協議で構造問題に進展があったとみられ3月2日の関税引き上げは延期へ

閣僚級の米中貿易協議が2月21日から4日間にわたりワシントンで開催されました。協議終了後の2月24日、トランプ米大統領は構造問題で十分な進展があったとし、3月2日に予定されていた中国製品の関税引き上げを延期することを表明しました。さらにトランプ米大統領は、交渉が進展すれば中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と首脳会談を開く意向を表明しました。

トムソン・ロイターは2月20日、米中両国は主要な構造問題で6つの覚書を準備していると報じました。トランプ米大統領の2月24日の発言によれば、今回の協議において、知的財産権の保護、技術移転の強要、農業、サービス、通貨の少なくとも5項目で進展があったとみられます。また中国国営新華社は2月25日、中国側の声明を公表しましたが、声明では、これら5項目に加え、非関税障壁も実質的に進展があったとしています(図表1)。

足元で、日経平均は底堅く推移しているが、依然として期待先行、先物主導によるところが大きい

米中貿易協議の結果を受けて、2月25日の日経平均株価は底堅く推移し、21,500円台で取引を終了しました。ただ、株式市場は3月1日以降の協議継続や、制裁関税の引き上げ延期は織り込み済みだったと思われ、日経平均株価の上昇幅はやや控えめなものとなりました。足元の日本株の堅調さは、期待先行、先物主導によるところが大きいとみています。そこで改めて海外投資家の先物の売買状況を確認してみます。

海外投資家は、日本株の先物を年初から累計で約1兆円買い越しています(図表2)。ただ、昨年1年間では約7.5兆円売り越していますので、これは米中貿易協議の進展をある程度見越した先物の買い戻し、つまり、売り(ショート)ポジションの調整に過ぎないと考えられます。それでも、先物が買われて一時的に割高になれば、証券会社などの裁定業者が「先物売り・現物買い」の裁定取引を行うため、現物の日経平均株価は上昇します。

産業政策と履行検証を含め米中首脳会談で合意なら中長期投資家の現物買いも期待されよう

なお、米国は2月27日、28日に2度目の米朝首脳会談を控えており、中国も全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の開幕が3月5日に迫っています。そのため、今回の関税引き上げ延期の判断は、協議が進展したという理由だけではなく、このような米中両国の事情を踏まえた側面も大きいと思われます。中国政府の産業政策と合意内容の履行検証という重要項目については、引き続き協議が行われる見通しです。

米中両国が、産業政策と履行検証を含めて最終合意に達すれば、米中首脳会談が開催される流れになるとみられますが、市場はまだここまでの展開を十分織り込んでいない可能性があります。そのため、米中首脳会談開催と合意文書の公表という方向性が確認できれば、海外投資家による先物の買い戻しが一段と進み、年金など長期投資家による現物買いも、徐々にみられるようになるのではないかと考えています。

(2019年2月26日)

 

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