日銀のマイナス金利解除への思わくが浮上
▣ 7月末にYCCの運用を柔軟化
日銀のマイナス金利解除への思わくが浮上しています。日銀は現在、短期金利をマイナス0.1%に長期金利をゼロ%程度に誘導する長短金利操作(イールドカーブコントロール、YCC)を継続しています。日銀は7月末の金融政策決定会合で、長期金利の事実上の許容上限を1%に引き上げました。市場では、日銀は急激な金利上昇は抑制しながら、この柔軟化したYCCの運用を当分継続し、マイナス金利の解除については、早くても来年半ばとの見方が大勢でした。
▣ マイナス金利解除への思わくが浮上
ただ、植田日銀総裁がインタビューで、短期金利をマイナス0.1%とするマイナス金利政策の解除のタイミングについて、「経済・物価情勢が上振れした場合、いろいろな手段について選択肢はある」と述べたと9日に伝わったことから、日銀のマイナス金利解除が意識され、週明けの11日には長期金利は0.705%と2014年1月以来の水準まで上昇しました。ドル円についても前週末の147円台後半から、週明けには一時146円前後まで下落しました。
▣ 長期金利はマイナス金利導入前を大きく上回る水準
日銀は2016年1月末にマイナス金利政策を導入しました。マイナス金利政策導入直前の長期金利は0.22%で、足元の長期金利はこの水準を大幅に上回ってきています(図表1)。
7月末の会合に合わせて公表された「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」では、2023年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)の前年度比の上昇率の見通しは2.5%ですが、2024年度は1.9%、2025年度が1.6%で、来年以降は物価安定目標の2%を下回る見込みです。
▣ 利上げを織り込み過ぎの可能性も
債券市場は来年のマイナス金利解除を織り込むとともに、その後の利上げまでも織り込んでおり、利上げ観測が先行してしまっている格好です(図表2)。超長期債利回りもマイナス金利導入前の水準を超えて上昇してきており、生保などの買いが入ってくると、長期金利の一段の上昇も限定的となる可能性があります。
ドル円についは、為替介入やマイナス金利解除が意識され、上昇しにくくなっています。他方、米国の金融引締め長期化観測も根強く、利上げが打ち止めとなり、利下げが見えてくるまでは、ドル円の下落も限定的となる可能性があります。
Jリートについては、資産価格からみた割安感があることやオフィス市場の回復期待などから、長期金利の動きが落ち着いてくれば、底堅い動きの中、戻りを探る動きも出てきそうです。
今月は日銀金融政策決定会合、米連邦公開市場委員会(FOMC)が予定されています。しばらくは、日米の金融政策をめぐる思わくで、内外の金融市場が不安定な動きになることも想定され注意が必要です。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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