日銀、長期金利の 0.5%超を容認
▣ 長短金利操作の運用を柔軟化
日銀は7月27、28日に開いた金融政策決定会合で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用を柔軟化しました。日銀はこれまで長期金利を0.5%以下に抑え込む運用をしてきましたが、今後は長期金利の上限については0.5%を目途とし、市場動向に応じて0.5%を一定程度超えることを容認することになります。
日銀は、粘り強く金融緩和を継続する必要がある中、経済・物価をめぐる不確実性がきわめて高いことに鑑みると、長短金利操作の運用を柔軟化し、上下双方向のリスクに機動的に対応していくことで、YCCなどの金融緩和の持続性を高めることが適当であるとしています。
▣ 長期金利の水準は
また、毎営業日実施している連続指値オペ(公開市場操作)の利回りについては、0.5%から1%に引き上げました。日銀は、長期金利が許容上限の0.5%を上回らないように、10年国債を無制限に買い入れる指値オペを実施してきましたが、今回の運用の柔軟化により、上限が1%に引き上がった格好です。
日銀の許容上限(2021年3月から2022年12月の会合までは0.25%、以降は0.5%)に長期金利が抑え込まれる前まで、長期金利と連動して動いてきていた10年物スワップ金利は、今回の措置を受け0.7%台まで上昇しています(図表1)。もっとも、上限が撤廃されたわけではないので、10年物スワップ金利をやや下回る水準が長期金利の上値の目途になる可能性があります。
▣ 出口はまだ先
合わせて公表された「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」では、2023年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)の前年度比上昇率の見通しが2.5%に上方修正されました(図表2)。ただ、2024年度は1.9%、2025年度が1.6%で、来年以降は物価安定目標の2%を下回る見込みです。
長期金利がある程度自由に動くことができるようになったことで、国債などの債券を売買する市場の機能が回復することが見込まれます。
とはいえ、賃金の上昇を伴う形で、2%の物価安定の目標の持続的・安定的な実現を見通せる状況にはまだなく、長期金利の上限やマイナス金利政策の撤廃など、現行の大規模な金融緩和の修正、正常化は当分先とみられます。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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