日銀、粘り強く金融緩和を継続
― 今回の金融政策決定会合のポイント ―
- 大規模な金融緩和を維持し、YCC(長短金利操作、イールドカーブ・コントロール)などの政策を修正せず
- フォワードガイダンスから政策金利に関する文言を削除
- 過去25年間の金融政策運営について、多角的なレビューを1年~1年半かけて実施
- 早期の政策修正観測は後退
▣ 大規模緩和を維持、政策金利のフォワードガイダンスを削除
日銀は4月27、28日に開いた、植田和男総裁が就任して初めての金融政策決定会合で、大規模な金融緩和の維持を決めるとともに、これまでの金融緩和の検証(多角的なレビュー)を始めることを決めました。
また、声明文から、「政策金利について、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定」としていた政策金利の先行きを示す指針(フォワードガイダンス)を削除し、「内外の経済や金融市場を巡る不確実性が極めて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の『物価安定の目標』を持続的・安定的に実現することを目指していく」との方針を示しました。
▣ 多角的なレビュー
植田総裁は多角的なレビューについて、「その当時使われていた政策手段、例えば時間軸政策や量的緩和政策などが25年間を振り返ってみるとどのくらいの効果を持ち、効果がもし期待されたほどではなかったとすると、どういう外的条件、あるいはやり方のまずさが影響したのかを分析する」としています。
レビュー期間中の政策変更については、毎回の決定会合で議論し、必要があれば実行すると、否定はしませんでした。
▣ 物価見通しを引き上げ
合わせて公表した「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」では、物価見通し(政策委員の中央値)を前回の1月時点から引き上げました(図表1)。資源高を背景に幅広い品目に価格転嫁が続く現状を反映した模様です。2023年度は1月時点の1.6%から1.8%に、2024年度は1.8%から2.0%に引き上げ、新たに示した2025年度については1.6%に低下する見通しです。2%の物価安定の目標達成については微妙な見通しです。
また、実質国内総生産(GDP)成長率見通しは、2023年度について、1月の1.7%から1.4%に下方修正しました。
▣ 辛抱して粘り強く金融緩和を継続
植田総裁は、物価については安定目標の2%に近い数字が続いているが、もう少し辛抱して粘り強く金融緩和を続けたいと述べるとともに、拙速な引締めで2%を実現できなくなるリスクの方が大きいと、緩和政策の継続を強調しました。イールドカーブ(利回り曲線)の歪みも解消されつつある中、日銀の慎重姿勢を受け、早期に政策を修正するとの観測が後退した格好です。
国内の長期金利は、0.48%程度まで上昇していたものの、今回の会合を受けて28日には0.4%を割り込みました。とはいえ、国債市場の機能低下などの副作用が出ている中、いずれは長期金利をゼロ%程度に誘導するYCCの修正や撤廃に動くとの見方は根強いため、長期金利の低下も限定的となりそうです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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