生保の 2023 年度の運用計画

2023/04/27 <>

国内の大手生命保険会社の2023年度の運用計画が出そろいました(図表1)。以下、日経QUICK、ロイター、Bloombergなどの報道を基に、運用計画をまとめています。

主要国の中央銀行による金融引締めで、政策金利が大きく引き上がる中、為替の変動リスクをヘッジ(回避)するコストが上昇しているため、今年度もヘッジ外債を減らす一方、国内債、特に超長期債に資金を振り向ける運用が引き続き主流となっているようです。

今年度の運用方針について抜粋した各社の主なコメントは以下のとおりです。

◆ 国内債券 ~ 超長期債を積み増し ~

  • 30年国債については、足元の利回りは買っていける水準だが、妙味があるのは1.5~2%。
  • 金利変動リスクの抑制に向け、超長期債を中心に国内債券の保有を積み増す方針。
  • ALM(資産・負債の総合管理)の観点から超長期債を中心に買い増す。
  • 現在1.3%台にある30年債利回りは買える水準だが、もっと利回りが上がってほしい。
  • 超長期債は平準的なペースで投入する。30年国債利回りが1%台後半であれば、追加配分を検討する。
  • 優良企業の社債は買い増ししていく方針。

◆ 外債

  • 為替相場の変動リスクをヘッジ(回避)するヘッジ外債や、ヘッジしないオープン外債は為替や金利の水準に応じて機動的に判断。
  • 海外金利は低下基調になると見込むものの、外国為替市場で円高が進む可能性があるほか、為替相場の変動リスクをヘッジするコスト(ヘッジコスト)も高止まりし、外債の投資妙味は乏しい環境が続く。

ヘッジ外債 ~ 慎重姿勢、外国社債に入れ替えも ~

  • 利回りが相対的に低い国債などソブリン債は売却し、ヘッジコストが高止まりしても高い収益を確保できる外国社債に入れ替える方針。
  • 海外金利の上昇を受けてヘッジコストが高止まりしているため、ヘッジ外債は昨年度に続いて減少を見込む。
  • 2023年度中は米連邦準備理事会(FRB)の利下げ転換がないと予想し、為替のヘッジコストも当面は高止まりするとみていることから、収益性が乏しいヘッジ外債は残高をゼロにする。
  • 保有する内外株式の資産価値が想定外に急落した場合に備える目的もあり、ヘッジ外債を全て売却するという選択肢は現時点ではない。
  • ヘッジコストの上昇の影響を受けにくい外貨建て変動金利資産などに投資する。

オープン外債 ~ 機動的に ~

  • 為替ヘッジを付けないオープン外債は、為替水準次第で機動的に資金配分を調整する。
  • 通貨ごとの為替・金利の水準や見通しなどを考慮して機動的に投資を進める。
  • 社債などクレジット投資を増やす。
  • 米国債利回りは比較的高い水準で、為替水準に留意しつつ投資を検討する。

◆ 内外の株式 ~ 慎重姿勢、外国株は機動的に ~

  • 国内外の株式相場は米欧の金融引締めが重荷となるものの、2024年3月末時点では小幅な下げにとどまると予想。
  • 国内株式はリスク管理目的で売却を続ける。外国株式は株価水準をみて機動的に残高を調整する。
  • 国内株は、総合収益の向上に資する効果的な銘柄入れ替えを実施しながらも、保有残高は減らす方向。外国株は海外の成長力を取り込む観点から積み増す計画。
  • 景気や株価水準を考慮しつつ慎重に対応する。

◆ その他、オルタナティブ等 ~ 不動産ファンド、インフラファンドを積み増し ~

  • 不動産やインフラなどのオルタナティブ(代替)資産を中心に外国株式を増やす。
  • オルタナティブ投資や不動産は、ポートフォリオの分散を目的に少しずつ残高を積み増す。
  • 投資用不動産は、市況を見極めながら大都市圏を中心に優良物件を厳選して積み上げ、残高は増加する計画。
  • インフレ耐性があり、収益安定性も期待できるインフラファンドなどを中心に残高を積み上げる。
  • プライベート・エクイティ(未公開株)や国内の不動産ファンドなどへの投資を着実に増やす。

◆ 今年度の相場見通し(図表2)

  • 国内の長期金利(新発10年国債利回り)については、YCCの撤廃や、許容変動幅の拡大などの修正に動くとの前提で、大きく上昇すると予想。
  • 米国の長期金利については、3%台を中心にした動きを想定。年度末は3%台前半との見方が大勢。
  • 日経平均株価は3万円を超える場面もあり得るとの見方。ただ、大きな上昇は見込んでいない。
  • NYダウはレンジでの動きを想定。
  • ドル円は120円台に、ユーロ円もおおむね130円台に戻る動きを想定。

◆ イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)について

  • 日銀が今年6月に、長期金利をゼロ%程度に誘導するYCCを修正すると予想。
  • 6月に開かれる会合でYCCの撤廃を見込む。ただ、マイナス金利政策については継続する。
  • 日銀は早ければ6月にもYCCで長期金利の変動許容幅を再拡大し、国債利回りが上昇すると想定。
  • 日銀が9月までにYCCを解除、修正すると見込む。ただ、YCCの修正後も緩和的な政策は維持されるとして、年度後半にかけて金利水準は落ち着く。
  • 市場機能の低下など副作用に配慮する目的で2023年度内にYCCを撤廃すると予想。

 

 

 

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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