円安進行について

2022/03/23 <>

▣ 6年ぶりに121円台まで上昇

米連邦準備制度理事会(FRB)が一段と金融引締めに積極的なタカ派的な姿勢に傾く中、米長期金利(10年債利回り)が大きく上昇したことを受け、ドル高・円安が進行し、足元ではドル円は121円前後まで上昇しています(図表1)。

▣ 日米の金融政策の方向性の違いが鮮明に

FRBは3月15、16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを開始するとともに、今年7回の利上げ見通しを示しました。事前予想の範囲内だったことで、米長期金利は16日には一時2.24%程度まで上昇しましたが、18日には2.15%まで低下する動きになりました。

ただ、パウエルFRB議長が21日の講演で、「今後の会合で0.25%を超える積極的な政策金利引上げの必要がある場合や、中立金利(景気を冷やしも熱しもしない金利水準、2.4~2.5%程度)を上回る引締めが必要な場合はそうする」と、利上げのペースをさらに加速させる姿勢を示したことなどを受け、米長期金利が大きく上昇しました。

一方、日銀の黒田総裁は一時的なインフレの上振れや円安の進行でも、大規模な金融緩和を堅持する姿勢を示していることで、日米の金融政策の方向性の違いが鮮明になり、ドル買い、円売りが強まったとみられます。

▣ 貿易赤字も円安要因

また、財務省が発表した2月の貿易統計(通関ベース)で、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は6,683億円の赤字となりました。原油や液化天然ガス(LNG)の価格上昇を受け、輸入が膨らみ、7か月連続の赤字です。輸入企業の円売り・ドル買い需要もドル円を押し上げている模様です(図表2)。

ロシアとウクライナの紛争が長期化し、エネルギーや食糧価格が高止まりすると、さらに赤字が拡大するとの観測も、円売りを強めているとみられます。

▣ 米長期金利はすでに大幅利上げを織り込み済みか

FRBはインフレを早期に抑制したい考えで、金融引締めを加速させる可能性が高そうです。FRBの早めの対応でインフレが落ち着いてくれば、米長期金利の上昇は一服するとみられます。3月のFOMCでは、政策金利が2023年末に2.75%程度まで上昇し、利上げを一旦休止する見通しが示されました。今後、2年弱の間、上下動を繰り返しながらこの水準に近づいていくというのがメインシナリオとして考えられます。米長期金利はすでに5月のFOMCでの0.5%の大幅利上げを織り込み、2.4%程度まで上昇していることから、一段の上昇は限定的とみられます。

▣ 一概に悪い円安とは言えないものの

とはいえ、円安は輸出企業の業績を押し上げる一方、原材料の輸入コストを増大させることから、日本経済にとって円安が悪いか良いかは、一概には言い切れません

今後、米長期金利の上昇が一服し、日銀が円安をけん制すると、ドル円はやや落ち着くことも想定されます。もっとも、ロシアとウクライナの停戦が見え、エネルギーや食糧価格の高止まりが後退するまでは、円安圧力がかかる可能性があります。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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