最近の長期金利の上昇について
▣ 長期金利は約6年ぶりの水準まで上昇
国内の長期金利(新発10年債国債利回り)は2月9日に一時、0.215%と約6年ぶりの水準まで上昇、5年国債利回りも6年ぶりのプラス圏に浮上してきており、これまで低位で推移してきた国内金利の水準が切り上がってきています(図表1)。
米欧で中央銀行が金融引締めに積極的なタカ派的な姿勢に移行し、長期金利が上昇していることに加え、日銀についても金融政策を修正するのではないかとの思わくも、国内金利を押し上げている模様です(図表2)。
▣ やや不安定な動きが続く可能性
しばらくは、米連邦準備制度理事会(FRB)による積極的な金融引締めへの過度な警戒が後退し、米金利が落ち着く、あるいは日銀の黒田総裁などが長期金利の上昇をけん制する、また日銀が臨時の国債買いオペや、指定した利回りで無制限に国債を買い入れる指値オペを実施し、金利上昇を抑制するまでは、やや不安定な動きが続く可能性があります。
▣ 今のところ日銀は静観
日銀は現在、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)として、長期金利をゼロ%程度に誘導しています。
2018年7月末に、当初は目標値のゼロ%から±0.1%程度(-0.10~0.10%)としていた長期金利の許容変動幅を、±0.2%程度に拡大した際、長期金利が0.145%と約1年半ぶりの水準まで上昇すると、臨時の国債買入れオペを実施し、金利上昇を抑え込みました。
以降、長期金利が大きく動くことなく低位で推移することになってしまった反省からか、昨年2月に日銀による更なる許容変動幅の拡大観測から、一時0.175%まで上昇した局面では、臨時の国債買入れオペなどで長期金利の上昇を抑制することなく、日銀は静観しました。
翌月の3月には、日銀は長期金利の許容変動幅を±0.25%程度に引き上げました。
▣ ±0.25%の枠内での動きは問題視しない姿勢
日銀の若田部副総裁は足元の長期金利の上昇について、2月4日の記者会見で「±0.25%の枠内においての動きととらえることができるのであれば、これ自体を問題視することはなく、また金融政策の修正は全く考えていない」と述べています。
また、1月の金融政策決定会合後の記者会見でも黒田日銀総裁が、事前報道で注目された「物価目標達成前の利上げ開始」などの政策変更を否定し、大規模な金融緩和を堅持する姿勢を改めて示しました。
▣ 日銀待ちも、さらなる上昇余地は僅か
債券市場では、日銀がどこまでの長期金利の上昇を許容するかを試す動きも想定されますが、日銀が許容する長期金利の上限は0.25%までと、それほど上昇余地があるわけではありません。
20年国債利回りは0.6%台、30年国債利回りは0.8%台と2018年11月以来の水準、40年国債利回りも一時2018年12月以来の0.9%に乗せており、長期金利が0.25%に近づき、上昇が一服すると、長期債、超長期債を中心に押し目買いが広がる(価格上昇、利回り低下)ことも想定されます。
債券市場は不安定な動きの中、日銀の行動待ち、押し目待ちの状況ですが、根強い政策変更(年内あるいは来年4月の黒田総裁退任後)への思わくや欧米中銀のタカ派的な姿勢は、長期金利の押下げを抑制する可能性があり、どこまで長期金利が戻るかについては不透明な状況です。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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