IMF世界経済見通しメモ(2022年1月)

2022/01/26 <>

▣ 2022年の世界の成長率を0.5%ポイント引き下げ

国際通貨基金(IMF)は1月25日、最新の経済見通しを発表しました。2022年の世界の成長率見通しは4.4%と、米国と中国の下方修正を主な判断材料として、昨年10月の前回の予測から0.5%ポイント引き下げられました。(世界および主要国の見通しは図表1、2を参照)。

▣ 米中は大幅に下方修正、日本は上昇修正

2022年の米国の成長率は4.0%と、大型歳出法案の成立が見通せないことなどを踏まえ、昨年10月時点の予測から1.2ポイント引き下げられました。バイデン大統領の看板政策である1兆7,000億ドル規模の気候変動・社会保障関連歳出法案「ビルド・バック・ベター(よりよき再建)」の押し上げ効果を除外したこと、米連邦準備制度理事会(FRB)による異例の金融緩和策の解除が前倒しになったこと、また供給不足(サプライチェーンの混乱)が継続していることを反映し、大幅に下方修正したとしています。

中国は、ゼロコロナ戦略によって移動制限が敷かれ、建設業部門における雇用の見通しが悪化していることから、民間消費は予想されていたよりも伸び悩む公算が大きいことや、不動産業への投資が低迷していることから、2022年の成長率見通しは4.8%と、前回から0.8%ポイント引き下げられました。

また、この引き下げは中国の貿易相手国の見通しにもマイナス影響を与えると指摘しました。

日本については、2022年は0.1%ポイントと小幅に、2023年の成長見通しは、外需が改善する見通しと財政支援の継続を勘案して0.4%ポイント、上方修正されました。

▣ インフレ率は2023年には減速

インフレ率は短期的には高水準で推移する見込みであり、2022年に先進国で平均3.9%、新興市場国・発展途上国で平均5.9%に達した後、2023年に減速する見通しです。

中期的なインフレ期待が安定し続け、パンデミックの影響が軽減するという想定のもとで、サプライチェーンの混乱の緩和や、金融引締めなどから、高インフレは徐々に沈静化する、また石油価格の急激な上昇も2022年から2023年にかけて落ち着いていくとしています。

▣ オミクロン株は

新たに出現したオミクロン株は、デルタ株に比べると重症化率が低いと考えられており、記録的な勢いで急増している感染者数も比較的早期に減少へ転じる見込みで、2022年第1四半期の経済活動に重くのしかかるとしつつも、第2四半期にはその影響が収束し始めると見込んでいます。

この予測は、オミクロン株の世界的な流行が勢いを失い、かつ、さらなる移動制限を要する新変異株にウイルスが変異しないことが前提としています。

▣ リスクは下向き

IMFチーフエコノミストのゴピナート氏は、今回の予想は不確実性が高く、リスクは全般的に下向きとなっているとし、以下のリスクを挙げています。

  • 致死率の高い変異株が出現すれば、危機は長引く恐れがある。
  • 中国のゼロコロナ戦略は世界の供給混乱を悪化させる可能性があり、同国の不動産部門の金融ストレスが広く経済に拡大すれば、広範に悪影響を及ぼす。
  • 米国で予想以上に高インフレが進行すれば、FRBによる積極的な金融引締めを誘発し、世界金融環境を急激にタイト化させる懸念がある。
  • 地政学的な緊張や社会不安もまた、見通しのリスク要因。

 

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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