ECB、危機対応措置を縮小

2021/09/10 <>

▣ ユーロ圏の経済回復を背景に、危機対応措置を縮小

欧州中央銀行(ECB)は9月9日の理事会で、新型コロナウイルス危機対策で導入した資産購入プログラム(パンデミック緊急購入プログラム、PEPP)について、資産(債券)購入ペースを緩やかに減速することを決めました(図表1、2)。

ユーロ圏で景気回復が鮮明になる中、金融政策の正常化に向けた第一歩との見方もできますが、危機対応を若干緩めただけで、PEPPとは別に実施している通常の量的緩和政策の縮小(テーパリング)や利上げについては、もう少し先の話になりそうです。

今回の主な決定事項:

  • 政策金利は据え置き
  • 資産買入れプログラム(APP)については、月200億ユーロの購入ペースを維持
  • PEPPについては、月800億ユーロの購入ペースを緩やかに減速(月600~700億ユーロ)
  • ただ、PEPPの総額1兆8,500億ユーロの購入枠は据え置き、また「少なくとも3月末まで続ける」との文言は維持

▣ ラガルド総裁の主な発言

  • ユーロ圏経済の回復はますます進んでおり、域内総生産(GDP)は年末までに危機前の水準を上回ると見込んでいる
  • 欧州連合(EU)の70%以上の成人がワクチン接種を完了する中、経済は大きく再開してきた
  • ただ、世界的なデルタ株の感染拡大は、経済再開を遅らせる恐れがある
  • 足元のインフレ上昇はおおむね一時的で、基調的な物価上昇圧力はゆっくり高まっているに過ぎない
  • 労働市場も急速に改善している
  • 今回の債券購入の減速はテーパリング(量的緩和の縮小)ではない。(PEPPを拡充した)昨年12月や(購入を加速させるとした)今年3月のような調整
  • 来年以降の景気や物価の状況がより明らかになる12月の理事会で、PEPPの運営方針を検討する

▣ 2021年の成長率予想を上方修正

あわせて公表した経済見通しでは、2021年のユーロ圏の成長率予想を5.0%と6月時点の4.6%から引き上げました(図表3)。ただ、インフレ率見通しは、2021年が2.2%、2022年が1.7%、2023年は1.5%と、持続的に物価目標の2%を達成するのは厳しい状況です。

今回の決定をある程度織り込んでいたことや、米連邦準備制度理事会(FRB)が年内にテーパリングを開始するとの観測が強まっていることから、金融市場の反応は限定的でした。

今後は12月の理事会に注目が集まりますが、それまではECBの要人発言などを確認しながら、今後の金融政策運営を探ることになりそうです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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