米インフレ懸念から金融市場は不安定な動き
▣ 米金融市場はインフレ懸念から不安定な動き
米国ではインフレへの懸念から金融市場がやや不安定な動きになっていましたが、5月12日に発表された4月の消費者物価指数が市場予想を大幅に上回る伸びとなったことから、インフレ懸念が一段と強まりました(図表1)。
インフレ懸念から米国株は大幅続落、米10年債利回りは一時4月5日以来の1.7%まで上昇、米金利の先高観が強まり、ドル円も108円台後半から109円台後半に大きく上昇する動きになりました。
▣ 4月の米CPIは予想を上回る大幅な伸び
4月の米消費者物価指数(CPI)は前月比0.8%上昇と、2009年以来の大きな伸び、また前年同月比は4.2%上昇と、2008年以来の大幅な伸びとなりました。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIも前月比0.9%上昇と、1982年以来の大きな伸び、前年同月比は3.0%上昇と、1996年以来の大幅な伸びとなりました。
コロナ禍で物価が落ち込んだ1年前の反動で大きく上昇するとの予想だったものの、この予想を大幅に上回りました。前月比でも大きく伸びたことから、4~6月は昨年の反動から上振れるものの、その後は落ち着くとの見方が揺らいだ格好です。
▣ 期待インフレ率も上昇
米国のインフレ連動債が織り込む今後5年間の期待インフレ率(ブレークイーブンインフレ率、BEI)は、昨年9月下旬には1.4%台(年率)の水準でしたが、昨年末には1.96%、今月10日には2.73%と、2006年以来の水準まで上昇、12日には2.75%弱まで上昇しました(図表2)。
米連邦準備制度理事会(FRB)が2%を超えるインフレ率を許容する姿勢を示す中、新型コロナウイルスのワクチン接種が進展し、経済正常化が加速するとの期待に加え、大規模な経済対策による景気の押上げ観測が、期待インフレ率上昇の主因とみられます。また、景気回復により、原材料やエネルギーなどの需要が増えるとの期待から商品価格が上昇していることも、期待インフレ率を押し上げている模様です(図表3)。
加えて、米労働省が5月11日に発表した3月の雇用動態調査(JOLTS)では、求人件数が812.3万件と過去最高を記録した一方、採用件数は600.9万件と大きな乖離があります。人手不足による労働単価の上昇観測も、期待インフレ率を押し上げている可能性があります(図表4)。
▣ FRBのテーパリングをにらみ、神経質な動きが続く可能性
FRBは、物価上昇は一時的との見解を示すとともに、金融緩和の縮小(テーパリング)の議論は時期尚早としています。とはいえ、カナダ銀行(中央銀行)は4月の金融政策決定会合で、国債の購入額を減額することを決定、またイングランド銀行(英中央銀行)は5月6日、8,950億ポンドの資産買入れ枠は維持したものの、週間の国債買入れ規模の縮小を決定しました。欧州中央銀行(ECB)についても、6月の会合で債券買い入れの減額を議論するとの見方が出ています。
FRBについては、8月のジャクソンホール会議でパウエルFRB議長が、米国債などを買い入れる量的緩和の縮小を示唆するとの見方が広がっていましたが、物価の上振れを受けて、もう少し早い時期(6月や7月の米連邦公開市場委員会(FOMC))にテーパリングが議論されるとの見方も出てきています。
米金融市場では期待インフレ率が大きく上昇してきており、将来的な物価上昇をある程度織り込んだ可能性はあります。とはいえ、米金融当局者が繰り返し示している“インフレ率が上昇しても一時的”なものになるかどうかを確認しながらの、やや神経質な動きがしばらく続く可能性があります。
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