生保の2021年度の運用計画
国内の大手生命保険会社の2021年度の運用計画が出そろいました(図表1)。以下、日経QUICKロイター、Bloombergなどの報道を基に、運用計画をまとめています。
生保各社は、2025年にも導入される規制により、保険の期間と債券などの運用期間をできるだけあわせるため、平均的な保険契約の期間に比べて短いとされる運用期間を長期化する必要があります。そのため、国内の超長期債については引き続き積み増し傾向が強いことに加え、30年債や40年債の利回り上昇を受け、投資妙味が出てきていることから、生保各社の超長期債への投資が国内債券のイールドカーブ(利回り曲線)の一段のスティープ化(利回り上昇、急こう配化)を抑制しそうです。
また、リスク分散と収益強化のため、オルタナティブ(代替)資産への投資、ESG(環境・社会・企業統治)を考慮した投資を一段と積極化している模様です。
今年度の運用方針について抜粋した各社の主なコメントは以下のとおりです。
◆ 国内債券 ~ 引き続き超長期国債や社債中心 ~
- 今年度も新資本規制をにらんで、短めの資産のデュレーション(平均残存期間)を負債(契約者に保険金を支払うまでの期間)に合わせていく必要があるため、超長期債を中心に増やす。
- 国債への積極的な投資を控え、代わりに事業債などクレジット資産の組み入れを進める。
- 国債増発や米国債の相場下落などで利回りが上昇する場面では、20年物や40年物の国債を含めて新規投資を検討する。
- 残存期間20年・30年といった超長期国債について、現状の利回り水準であれば積極的に積み増す方針。
◆ 外国債券 ~ 見方が分かれる ~
- 外国債券については、金利上昇リスクが高いとみており、残高を減らす。
- 外国社債についても国債との利回り差(スプレッド)が縮小しており、投資を抑制する。
- 米国債は日本国債に比べ利回りが高いものの、数年先にはヘッジコストの上昇が見込まれるとして投資を抑制する。
- 金利水準の低い国債への投資を抑え、金利情勢を注視しながら、相対的に利回りの高い社債を積み増す。
- 足元ではヘッジコストが歴史的な低水準にあり、米債を中心にヘッジ付き外債は投資妙味がある。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)による緩和縮小には留意する。
- 米長期金利の上昇傾向がみられることから、動向を見ながら買い入れ額を増減させる。
◆ 内外の株式 ~ 押し目狙い ~
- 国内外の株式については、株式相場が下落基調となる懸念は小さいとみており、株価の調整局面を見極めて慎重に購入する。
- 株式投資は調整局面での押し目買いを狙う。
- 国内株については株価水準が高いとみており、今年度の相場見通しの下限に近づく局面で購入を検討する。
- 国内外の株式は、新型コロナウイルスの感染拡大の収束後の企業業績の回復とともに上昇基調をたどると想定しており、中長期的に割安とみた水準で購入する。
- 新型コロナの感染拡大の影響が残ることから、外国株とともに慎重な投資方針を維持する。
◆ オルタナティブ等 ~ 積極姿勢継続 ~
- 株式や債券など伝統的な運用資産の値動きと相関の低いヘッジファンドといったオルタナ資産や不動産への投資も増やし、収益力の向上とリスクの分散を図る。
- オルタナティブ投資は景気変動の影響を受けにくいインフラファンドやプライベートファンドに資金を振り向け、安定的な収益獲得を目指す。
- 環境や社会、企業統治への投資先の取り組みを重視するESG投融資については、今後も拡大が見込まれる中、状況を見極めながら強化する。
◆ その他
- 世界的な金融緩和政策の継続で、長期金利の上昇幅は限られると予想。
- 利回りの乏しい国債への投資は抑え、収益源を多様化する。
- ワクチンの普及に伴う経済活動の正常化を背景に、金利のオーバーシュートも想定しながら運用していく。
- 世界経済の情勢を見極めながら、慎重な運用姿勢で臨む。
- 経済や企業業績の回復期待から株価は底堅く推移するとの見方から、資金をリスク資産への投資に振り向ける。
◆ 今年度の相場見通し(図表2)
- 長期金利については、これまでのゼロ%程度から引き上げ。
- 米長期金利については、大幅に引き上げ、足元の水準(5%台後半)より目線は上の生保が大半。
- 国内株については一部を除き、年度末の日経平均株価は3万円乗せの見方。
- NYダウについては、堅調地合いも、大幅な上昇は見込まず。
- ドル円は110円を若干上回る見通しの生保が多い。
- ユーロ円は130円前後が大半で、足元の水準から大きく外れない見通し。
図表、スケジュール入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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