政策金利の長期見通しから、米長期金利を見ると
▣ 米長期金利上昇は一服したものの
米国では大型経済対策による景気の押上げ期待やインフレが加速するとの見方に加え、新型コロナウイルスのワクチン接種の進展を受けて、早期の経済正常化への期待が強まっていることを背景に、米長期金利(ここでは10年債利回り)は3月30日には一時1.8%近くまで上昇しました(図表1)。大規模な財政出動による米国債増発で、米国債市場の需給が悪化するとの懸念も、米長期金利を押し上げた模様です。
また、米連邦準備制度理事会(FRB)は、2023年末までゼロ金利政策を維持する見通しを示していますが、市場では利上げの前倒しや米国債などを買い入れる量的緩和の縮小(テーパリング)への警戒もくすぶります。
▣ 早期の利上げ観測はやや後退
もっとも、利上げ観測については、米短期金融市場では一時2023年末までに2回程度の利上げを織り込む動きになっていましたが、FRBが金融緩和の縮小に対する慎重な姿勢を維持していることなどから、足元ではやや後退しています(図表2)。
また、バイデン米政権が打ち出した2兆ドル超のインフラ投資計画では、財源は増税で賄い、米国債増発には依存しない方針であることも手伝い、米長期金利の上昇は一服しています。
▣ 利上げ開始前には、米長期金利は政策金利の長期見通しの水準には到達せず?
前回の金融緩和時では、利上げが開始される前までは、米長期金利は政策金利の長期見通しの水準に到達することはなく、近づいたとしても1%程度低い水準でした(図表3)。3月に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の参加者による政策金利の長期見通しは2.5%で、足元の1.5%を超える米長期金利の水準はやや行き過ぎとも考えられます。
ただ、需給悪化懸念に加え、FRBが2%を超えるインフレをある程度容認する方針であることなどが、長期金利を押し上げている可能性はありそうです。
▣ 来年には最大雇用に近づく見通し
FRBは物価の安定とともに最大雇用を責務としています。最大雇用への到達度を失業率のみでは評価しないとしているものの、失業率は大きな判断材料であり、FOMC参加者の失業率の長期見通しは、最大雇用の一つの目安とされます。
前回利上げが開始された2015年12月には、失業率が長期見通しとほぼ同水準まで低下した局面でした(図表4)。米国の失業率は昨年3月に14.8%まで上昇した後、今年の3月には6.0%まで低下しています。3月のFOMC参加者による失業率の長期見通しは4.0%ですが、2022年の見通しは3.9%と、長期見通しを下回るとしています。
▣ 当面、一段の金利上昇は限定的か
やや先の話ですが、失業率が4%に近づくと、テーパリング観測が強まり、米長期金利が一段と上昇することも想定されます。それまでは、米長期金利が一段と上昇する局面では、投資家の米国債を買う動きが広がり、金利の上昇を抑制するとみられます。また、米長期金利が2%を超えてくると、物価見通しの影響を除いた実質の米長期金利もマイナス0.6%半ばから0%に近づき、金融緩和が弱まることから、FRBが金利上昇をけん制することも想定されます。
しばらくは、今後予想される物価の上昇が一時的か、順調に労働市場が回復していくかなどを確認しながら、米債券市場は神経質な動きが続きそうです。
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