債券市場は日銀を試す動き
国内の長期金利(10年債利回り)は26日に一時、日銀がマイナス金利を導入した2016年1月以来の0.175%まで上昇しました(図表1)。米長期金利が節目の1.5%を上抜けする中、国内の債券市場では、3月の日銀の政策点検を前に、日銀がどこまで金利上昇を許容するのか試す動きになっています。
▣ 日銀の3月の点検への思わく
日銀は3月の会合をめどに、新型コロナウイルス感染症の影響により、経済・物価への下押し圧力が長期間継続すると予想される状況を踏まえ、経済を支え、2%の「物価安定の目標」を実現する観点から、より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検を行う予定です。
日銀は点検について、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の継続を前提にするとしており、金融政策の枠組みを大きく変える可能性は低いとみられます。とはいえ、この点検に伴い、「長期金利操作の変動幅を拡大する可能性がある」と報じられており、日銀が長期金利のある程度の上昇を容認するとの観測が広がっています。
▣ 日銀がどこまで金利上昇を許容するか試す動き
日銀は2016年1月末にマイナス金利政策を導入、同年9月には短期金利のマイナス金利に加え、長期金利がおおむねゼロ%程度で推移するように買入れを行うイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)を導入しました。日銀は当初、長期金利について0±0.1%程度の範囲で動くようにしていましたが、18年7月には幅を2倍の±0.2%程度まで広げました。
ただ、今年2月には、日銀が上場投資信託(ETF)買入れの判断基準とみられていた、前場のTOPIXがマイナス0.5%以上下落となった場合でも、ETF買入れを見送るなど、3月の点検を前に日銀の政策に変化が出てきています。債券市場でも、日銀が長期金利の変動幅を拡大し、長期金利の上昇を許容する方向なのか、またその場合には、現在0.2%程度までとしている長期金利の上昇をどこまで許容するのか、試している格好です。
▣ 米債券市場も一段の金利上昇ならFRBの対応待ちか
米長期金利については、節目でもあり、2019年の最低水準、またコロナ前の2020年1月の最低水準である1.5%程度が、上値の目途として意識されていましたが、25日には一時1.61%まで上昇し、この水準を上抜きました。もっとも、この日は1.52%まで戻して終わっています。米国債市場は、財政出動による国債増発を受けた需給悪化懸念や景気回復期待などをひとまず織り込んだとも考えられます。また、一段の上昇で株式市場が不安定な動きになった場合には、米連邦準備制度理事会(FRB)が金利上昇の抑制に動くことも想定されます。
他方、国内の債券市場についても、米長期金利上昇が一服すると、落ち着きを取り戻すことが想定されます。目先、長期金利は0.2%までは上昇しないとみられますが、日銀が国債買入れオペの金額を増加させるなど、金利上昇の抑制に動くかどうかが注目されます。
3月16、17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)、3月18、19日の日銀金融政策決定会合までは、落ち着かない相場が続きそうです。
図表、スケジュール入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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