日銀のETF買入れ、年初に減額
▣ 年初にETFの買入れ額を減額
日銀は昨年3月16日に、新型感染症拡大の影響を踏まえた金融緩和の強化として、指数連動型上場投資信託受益権(ETF)の資産買入れを、当面、これまでの約2倍のペースである年間約12兆円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行うことを決めました。
日銀はETFについて、コロナ前の1月、2月は1回あたり702~703億円の買入れを行っていましたが、3月は1,002億円、1,204億円と増額し、この決定を受けて2,004億円まで増やしました。ただ、4月以降は徐々に減額し、10月には701億円と、コロナ前の水準に戻しました(図表1、2)。
黒田日銀総裁はETFの積極的な買入れについて、「特に金融資本市場が不安定な動きをしており、リスクテイクの考え方が非常に弱くなってリスク回避的になっているので、それを防ぐためにETFの買入れを倍増のペースで行っていく」と説明していました。株式市場が9月には急落する前の2月の水準まで戻り、安定した動きが続いていたことから、積極的な買入れを後退させた格好です。12月には日経平均株価は1990年8月以来の水準まで上昇しました。
そして、年明けの1月4日、日銀は買入れ額をさらに501億円に減額しました。
▣ 市場の状況に応じて、買入れ額を上下に調整する方針
日銀は、市場の状況に応じてETFの買入れ額は上下に変動しうるものとしています。買入れ実施の判断基準は今のところ変わっておらず※、“市場の状況(日経平均株価が約30年4か月ぶりの高値まで上昇)”に対応して、1回あたりの買入れ額を一段と減額した模様です。
日銀はやみくもに買い入れるのではなく、市場の状況に応じて、買入れ額を上下に調整する方針に沿った形で、柔軟に対応していく姿勢を改めて示した格好です。
1月に入り、1回あたりの買入れ額が減額されましたが、相場が荒れた場合には増額、株価が一段と急伸する局面ではさらに減額することも想定されます。
※前場のTOPIXが0.5%以上下落、2営業日続落かつ前場のTOPIXが0.25%以上下落、相場が荒れた局面では前場のTOPIXの騰落にかかわらず買入れ実施(いずれも日銀が示した基準ではなく、これまでの実績から推測)。
▣ 売らない日銀の買いは続く
日銀は3月の会合をめどに、2%の「物価安定の目標」を実現する観点から、より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検を行い、その結果を公表する予定です。もっとも、黒田日銀総裁はETFの売却については、「出口の議論の一つで、全く時期尚早」と否定的です。
買入れ額に上下動はあるものの、日銀によるETFの買いは今年も続くことが見込まれます。
図表、スケジュール入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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