世界景気の現状と予想:中国は失速傾向、米欧は底堅い

2023/06/05 <>

経済予想
経済予想は簡単でなく、描いたシナリオはしばしば修正を迫られます。現在、金融市場参加者が再考し始めているのは、米欧景気が悪化する中、中国景気の力強い回復が世界経済を支える、とのシナリオです。

中国では、昨年終盤、コロナウイルスの感染抑止策が緩和されました。これに伴い、今年は中国の景気回復が鮮明になる、と年初頃には多くの人が予想しました。一方、米国やユーロ圏については、これまでの利上げの影響やインフレなどにより、今年は景気後退に陥る、と予想する人が少なくありませんでした。

中国景気

たしかに、中国では今年序盤、経済正常化の動きによる景気回復が鮮明となりました。実際、1-3月期の実質国内総生産(GDP)は前期比年率で約9%増と、個人消費の主導で高い成長率を記録しました。

4月以降もプラス成長が見込まれますが、個人消費の伸びは、勢いがやや鈍っている模様です。また、輸出の伸び悩みなどから、工業生産は緩慢な伸びにとどまっています。それらを受け、製造業・非製造業とも、企業の景況感は低下しつつあります(図表1)。中国景気の回復は、早くも失速しているようです。

米欧景気

一方、米欧経済は、今年中に深いリセッション(景気後退)に陥る可能性は低下した、と言えます。雇用の底堅さなどにより、米国やユーロ圏における実質GDPの継続的な落ち込みは避けられそうなのです。

また米国やユーロ圏では、エネルギー価格の下落などで、インフレが徐々に鈍化しそうです。これは底堅い雇用とともに、個人消費を下支えするはずです。さらにインフレの鈍化で、米国、ユーロ圏とも、金融引締め姿勢が和らぐと考えられます。近い将来に利上げが停止すれば、米欧の景気を支援するでしょう。

世界景気

以上のように、中国経済は市場で予想されていたほどには強くない模様である一方、米欧は悲観論に反し深い景気後退を回避できそうです。こうした中、世界経済は今後、どのように推移するのでしょうか?

世界景気は緩やかな拡大を続けるだろう、と予想されます。中国景気が失速しつつあるとはいえ、極端な景気悪化を阻止すべく、中国政府・中央銀行は柔軟に景気対策を今後検討するはずです。また、米欧で利上げが停止すれば、米欧景気の拡大を促し、かつ、それは中国から米欧への輸出を後押しするでしょう。

資源価格

また、中国の景気減速観測などから、原油や銅などといった資源の価格が足元軟調となっています(図表2)。中国はそれらに関し世界最大の輸入国であり、中国景気の減速は、世界的な資源需要を抑えます。

資源価格の軟調が続けば、世界中のインフレが抑制されます。これらは米欧の利上げ停止などを通じて、世界経済の大きな好材料となり得ます。ロシア・ウクライナ戦争やコロナウイルスなど、予想困難なことは多数残存していますが、世界景気の緩やかな拡大という基本見通しは、当面、微修正で済みそうです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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