米国の財政問題など:「自由」をめぐる対立は根深い

2023/05/29 <>

緊張は続く
6月上旬に米国政府がデフォルト(債務不履行)に陥る可能性は、まだ残っています。よって今週も、債務上限の引上げをめぐる米議会などでの審議を、金融市場参加者らは緊張して見守らねばなりません。

結局は債務上限が引き上げられるだろう、と市場では楽観視されています。そして5月27日、それを引き上げる方針で、バイデン大統領(民主党)と共和党指導部が合意しました。ただ、議会が承認しなければ上限は引き上げられず、デフォルトとなるはずです。そうなれば、金融市場に巨大な衝撃を与えます。

楽観の根拠

市場の楽観論は、株価に反映されています。デフォルト懸念にもかかわらず、米国株は足元、上昇の動きを示しているのです(図表1)。特に人工知能(AI)の普及期待などで、テクノロジー株が堅調です。

市場の楽観論は、民主党、共和党ともデフォルトを容認するほどには愚かでないだろう、との考えに基づきます。デフォルトとなり社会保障費などの支払いが遅れれば、米国民は激怒するでしょう。怒りの矛先は自党に向かう可能性があるため、相互に歩み寄りデフォルトを回避するのが、両党にとって得策です。

大きな違い

それでも債務上限引上げに失敗し、米国政府が少なくとも一時的なデフォルトに陥る可能性は、皆無ではありません。二大政党(民主党と共和党)間の対立の根底には、考え方の大きな違いがあるからです。

両党とも国民の「自由」を重んじているものの、「自由」の前提や手段をめぐる考え方が、明確に違います。民主党は、社会保障の充実など(→歳出拡大)で公平な社会を築くことが「自由」の前提と考えます。共和党の場合、政府の役割を極小化(→歳出抑制)することで、個人の「自由」が高まると考えます。

米国の問題

債務問題に限らず、米国の多くの対立は「自由」に関連します。例えば「銃」の問題では、その規制は社会の安定を通じ「自由」に資するのか、それとも銃保有の「自由」を損なうのか、と国論が分かれます。

要するに、社会保障や規制などによる国家介入を良しとするのが民主党、そうした介入を基本的に嫌うのが共和党、と言っていいでしょう。このような違いは根深く、債務上限については今後の歳出を厳しく抑制することを条件に引上げを認める、という共和党の主張を、民主党は簡単には受け入れられません。

大統領選挙

政治的な対立が最高潮に達するのが来年11月の大統領選挙、と考えられます。その選挙戦は、すでに始まっています。これから、それぞれの陣営が、全力でほかの陣営を非難したり中傷したりするでしょう。

この選挙は結局、バイデン現大統領とトランプ前大統領との対決となる可能性が高そうです。トランプ氏は、現在も共和党支持層の中で高い支持を得ているのです(図表2)。選挙戦の行方は不確実ですが、いずれにせよ米国の政治対立は今後おそらく激化し、財政などをめぐる先行き懸念が市場に残りそうです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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