中国景気の回復:それは世界経済に希望を与えるのか?
中国に対する期待
今年の中国経済は回復基調が続くと予想され、それは世界に希望を与えるでしょう。米欧経済が利上げなどで圧迫されると見込まれる中、日本を含む国々は、中国経済に期待せざるを得ないのが現実なのです。
幸いにも今、中国景気の回復はほぼ順調です。特に個人消費が、感染症対策の緩和などに伴い急回復しています(日本アニメを含む映画の興行も好調)。また中国からの旅行客増で、タイ、シンガポールなどの観光業や小売業が潤っています。日本の観光・小売業者も、中国人の訪日急増を切望しているはずです。
1-3月期のGDP
最近の経済指標も、中国景気の回復基調を示しています。とりわけ、1-3月期の実質国内総生産(GDP)は前年比4.5%増となりました。前期比では2.2%増(年率換算で約9%)と、非常に高い成長率です。
成長を主導したのは個人消費であり、これは中国の人々の旺盛な消費意欲を表しています。そのことは、3月に前年比10.6%増となった小売売上高でも確認されているとおりです。ただ、不動産市場や輸出については、まだ持続的な回復を確信することができません。とはいえ、いずれも最悪期は過ぎた模様です。
住宅と輸出の動向
不動産市場については3月、中国70都市の新築住宅価格が前月比0.4%程度の上昇となりました。これは、大手開発業者の経営危機を受けて不動産市場が落ち込む前(2021年前半)以来の、高い伸びです。
また、中国の輸出は、米欧景気の減速のため苦戦が続く、と筆者らは予想していました。ところが3月の輸出は前年比14.8%増と、急激な回復を示しました(図表1)。品目では電気自動車、国・地域ではロシアや東南アジアに対する輸出が顕著に増加しました。これらは、中国経済の多様性と柔軟性を表します。
中国の成長を歓迎
一方、輸入は3月に前年比1.4%減となりました(ただ、減少幅は昨年終盤に比べ縮小)。中国景気の今の回復は消費主導であり、製造や建設の回復はやや遅れているため、資源輸入などが伸び悩んでいます。
それでも中国人の消費意欲により、他国は多大な恩恵を受けています。これはアジアに限らず、欧米でも同様です。中国の富裕層は、欧州などのブランド品を好みます。そうした人々の消費が回復するにつれ、とりわけフランスの高級品メーカーの業績が向上しており、それを背景に同国の株価も堅調です(図表2)。
中国は孤立しない
フランスに関しては、4月にマクロン大統領が多数の企業トップを引き連れ、中国を訪れました。これが可能になったのは、中国で感染症対策が緩和され、中国と他国との往来が正常化しつつあるためです。
そして同大統領は国益の視点から、台湾や経済などの問題に関する米国の対中強硬策に追随しない旨を述べました。今やフランス、日本を含め、中国経済に頼る国が多数派なのです。よって中国は孤立しない、というのが、市場での冷静な見方です。それが正しければ、日本の観光業などの将来も明るいでしょう。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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