金融危機再来?:米シリコンバレー銀行などの破綻について
銀行株が大幅下落
いま市場で警戒されているのは、金融の安定性に関してです。金融とは資金融通の仕組みであり、経済の潤滑油と言えます。その中心的な役割を果たす銀行に関し、特に米国で経営不安が広がっているのです。
契機となったのは、とりわけ、シリコンバレー銀行という米国の中堅銀行の経営が3月10日に破綻し、事業停止に至ったことです。これを受け、ほかの銀行も破綻するのでは、との警戒感が市場で広がりました。そして米国だけでなく欧州、さらには日本の銀行株も、大幅な下落を余儀なくされました(図表1)。
金融危機の再来か?
実際12日には、シグネチャー銀行という米銀が、破綻に追い込まれました(同行は資産規模で全米29位、シリコンバレー銀行は16位。昨年末時点)。銀行破綻が相次ぐのは、米国でも非常に珍しいことです。
こうした破綻や市場混乱を受けて想起されるのは、2008年の世界金融危機です。「100年に一度の危機」と称されたこの危機時には、株式や不動産など多くの資産の価格が急落し、世界経済は長い低迷に陥りました。米国の中堅銀行の破綻で広がった今回の混乱も、同様の世界金融危機につながるのでしょうか?
破綻銀行の特殊性
その可能性は、現時点ではおそらく低いでしょう。根拠としては、今般破綻した米銀の特殊性が挙げられます。また、2008年の危機後の金融規制強化や、米欧中央銀行などの現在の金融支援姿勢も重要です。
シリコンバレー銀行は、資金の運用と調達に関し、新興テクノロジー企業との取引にほぼ集中してきた銀行です。シグネチャー銀行については、暗号通貨(ビットコインなど)業界と密接な関係があります。そのように両行とも特定業界に依存していたため、その業界が不調となれば打撃を強く受ける構造でした。
破綻に至った経緯
シリコンバレー銀行の場合、コロナウイルスの感染拡大・オンライン化に伴うテクノロジー業界の活況などで、2021年まで事業が急拡大しました。しかし感染が落ち着くにつれ、その活況が一服しました。
そして、同行では融資の伸びが鈍化する中、資金運用は債券中心となっていました。そうした中、米連邦準備理事会(FRB)の利上げなどに伴う市場金利の上昇(→債券価格の下落)のため、同行の財務状況が悪化しました。これらによる経営不安から同行の預金が一斉に引き出され、経営破綻に至りました。
当面は警戒すべき
シリコンバレー銀行の資金運用・調達構造は、米銀の中で突出して偏っていました。ほかの米銀、特に大手銀行は多様な調達や運用を行っており、シリコンバレー銀行と同様の破綻は起こりにくいでしょう。
また、金融規制改革などの結果、銀行財務は2008年と比べ全体的に改善しています(図表2)。さらに、米政府やFRBは今回、預金保護策や銀行への緊急融資策を迅速に発表しました。ただし、主要銀行よりも財務基盤が弱い一部の米銀では、預金がパニック的に流出する可能性も残り、当面警戒を要します。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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